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悪性リンパ腫のPET診断

悪性リンパ腫とは

悪性リンパ腫は、リンパ系の組織から発生する腫瘍(癌)です。リンパ系組織とは、ヒトの免疫システムを構成するもので、リンパ節、胸腺、脾臓、扁桃腺等の組織・臓器と、リンパ節をつなぐリンパ管、そしてその中を流れるリンパ液から成ります。リンパ系組織は全身に分布しているため、悪性リンパ腫は全身どこでも発生する可能性があります。
悪性リンパ腫の割合は、全悪性腫瘍のうち2.5%を占めていて、その発生率は、年間人口十万人に対して男性が9名、女性が6名ほどです。
悪性リンパ腫の発生原因の一部として、ウイルスや細菌感染、慢性炎症刺激等が関与していることが知られていますが、まだ詳しいことはわかっていません。ただ、遺伝もしないといわれています。

 

悪性リンパ腫の種類と症状

悪性リンパ腫は大きく分けて、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられます。ホジキンリンパ腫は日本人には少なく、悪性リンパ腫全体の約10%で、若い世代での発症が多く、比較的悪性度が低く、治ることが多い癌です。 非ホジキンリンパ腫は50代以上での発症率が高く、病理学的にはさらに多くの病型に分類されます。大きくは以下の2型に分類されます。

Ⅰ 濾胞性リンパ腫は、さらに中細胞型、混合型、大細胞型と分けられます。
Ⅱ びまん性リンパ腫は、大細胞型が最も発症頻度が高く、リンパ芽球型、バーキット型などの多くの病型があります。

進行スピードによる分類では、低悪性度(年単位で進行)、中悪性度(月単位で進行)、高悪性度(週単位で進行)に分けられます。
悪性リンパ腫の症状は、首、わきの下、足の付け根などリンパ節の多い所に痛みを伴わないしこりが触れたり、発熱、体重の減少、寝汗などの全身症状を伴うことがあります。

 

悪性リンパ腫の診断 

悪性リンパ腫の診断は、大きくなっているリンパ節を切除して、顕微鏡で細胞の顔つきから診断します。
病気の広がりとしての診断は、血液検査などの方法もありますが、CT、MRI、PETなどの画像診断を用いる場合が多いです。特にPETはCT・MRIでは診断できない身体全体の病気の広がりを正確に診断できます。

 

PET健診で見つかった悪性リンパ腫

症例1はPET健診を行って、極早期の悪性リンパ腫が見つかった例です。 図1に示すように、PET像にて右のわきの下に、小さな集積()が見られます。PET-Fusion画像では、リンパ節に一致して薬剤が集積していることがわかります。CT画像だけでは悪性リンパ腫と診断できません。
この方は手術によってこのリンパ節を切除し悪性リンパ腫と診断しました。以後毎年PET健診を行っていますが、再発はしていません。
症例2の方は毎年PET健診を受診されてい る方です。過去2回は異常は見つかりませんでしたが、3回目の健診でお腹の中に集積を認めました(図2)。これは大動脈に接するリンパ節で、その後の経過観察により、悪性度の低い濾胞性リンパ腫と診断されました。3年経過してもわずかに大きくはなっているものの、特に治療はしていません。

図1〜2

病院に通院していたが発見が遅れた例 

症例3は、自覚症状があっても発見が遅れた例です。
胃の不快感を覚えて、胃カメラを行いましたが、胃の中はきれいで異常がなく、その後胃の不快感を覚えても放置していました。しかし1年半後の胃のバリウム検査で異常を指摘されました。
再度胃カメラを行ったところ、胃に粘膜腫瘍があり、細胞診にて悪性リンパ腫と診断されました。CTでは鼠系リンパ節転移を疑われ、PETを行いました。その結果が図3の画像です。最初に発症したのは胃の周囲にあるリンパ節()でした。そのため胃の不快感という症状が比較的早くからありました。しかし、腫瘍は胃の外にあるため、胃カメラ(胃カメラは胃の中しか見られません)では見つけることが出来ず、発見が遅れ、左右の腋窩リンパ節(1→)、骨盤内リンパ節(2→)、左右鼠径リンパ節(3→)と転移が全身に広がっています。

症例4は、乳癌の術後の方で、定期的に検査を行って経過観察を行っていました。超音波検査を行ったところ、左腋窩リンパ節が腫大しており、細胞を採って検査した結果、悪性リンパ腫と診断されました。全身CT検査では、後腹膜リンパ節が腫大していたため、より正確な診断が必要になり、PET検査を受けました。図4の治療前のPET検査では、腎臓の間の後腹膜リンパ節が腫大しています()。また、右頚部リンパ節(1→)、左鎖骨と左腋窩リンパ節(2→)、縦隔リンパ節(3→)、両総腸骨〜鼠径リンパ節(4→)に転移が見られ、しかも脾臓への浸潤(5→)もあります。
この方は乳癌の術後の方で転移や再発などを入念に検査していた方でしたが、お腹の悪性リンパ腫は見つけられず、腋窩リンパ節に転移してから見つけることが出来ました。
その後この方は、化学療法を行い4ヵ月後に治療の効果判定目的でPET検査を受けています。それが治療後の画像です。全ての悪性リンパ腫が消失しています。

図3〜4

まとめ

悪性リンパ腫はリンパ節のあるところであれば、身体のどこにでも出来ます。リンパ節は臓器とは異なり、一般的な検査の対象とはならない部位です。このため症例3の方のように、各種検査をしても発見することが出来ず、見つけたときは既に全身に転移していることも多いです。PET検査では、症例1や2のように自覚症状もなく、血液検査でもわからないような極早期の悪性リンパ腫も見つけることが出来ます。

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