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舌がんのPET診断

舌の概要

舌は、前2/3の可動部舌と奥1/3の舌根部に分けられます。舌根部は舌中咽頭に分類されて、舌がんという時の舌は、可動部舌(口を開けて鏡で見える範囲)です。
舌の働きは、①嚥下機能(食物をのどに送り込む)②構音機能(言葉を作る)③味覚の3つです。

舌がん

舌がんは、口腔内に発生する癌の約90%を占めています。舌がんの男女比は約2:1と男性に多くみられ、好発年齢は50歳代後半ですが、50歳未満が約1/4を占め、他の口腔がんに比べ若い世代の発症も高く、20~30歳代でも罹患します。また近年、発症者、死亡者は年々増加しているがんです。
舌がんの原因は明らかではありませんが、飲酒・喫煙などの化学的な慢性刺激や、歯並びの悪い歯が常に当たる機械的な慢性刺激などが、誘因と考えられています。
舌がんは、舌の先端や真ん中にできることは稀で側縁に好発します。
病変の状態は大きく二つに分けることが出来ます。
病変の表面に膨隆、びらん、潰瘍を認める、潰瘍型や膨隆型は内向性に発育し、深部組織に深く浸潤して嚥下障害や構音障害を来します。対して白板、肉芽、乳頭状を示すものもあり、これらのがんは外向性に発育し、粘膜表層を広範囲に進展しますが、深部への浸潤は比較的少ない傾向があります。
多くの場合、舌がんは見ただけで怪しいと気づくことが多いのですが、小さいもの、奥に存在するものなどは早期には見落とすこともあります。また、潰瘍などができても口内炎として放置することもあり、早期発見が遅れる場合もあります。
しかも舌がんは他のがんに比べて、早い時期から頸部リンパ節に転移して急速に進行する極めてたちの悪いタイプもあり、早期発見が重要です

診断と検査

舌がんの診断では生検を行います。生検とは、病変の一部を採取して顕微鏡でしらべます。これによってがんであるか、そうでないかの組織学的な診断を行います。これはどのようながんであっても行われていることですが、舌がんの場合は直接見て採取することが出来ます。この生検によってがんの種類がわかります。舌がんの多くは扁平上皮癌ですが、腺癌であることもあります。
がんと確定した場合には、がんがどこまで広がっているか、つまり進行度(病期)を調べます。この病期がわからないと治療方針が決まりません。先ほど記したように、舌がんはリンパ節転移をしやすいがんです。転移を調べるためには、従来CT、MRIなどの画像診断が使われてきました。ただし口の周りは、骨、空気の様に極端に吸収差のある部位であるうえ、歯には歯冠のような金属、最近では歯科用インプラントなどの金属もあり、CT・MRI検査でも診断しにくい部位です。
またCT・MRIでは転移を見つけることが困難な場合も、PET検査では良く見つけることが出来ます。そのため最近では治療前の病気診断、治療後の再発診断にPET検査が良く用いられています。

転移のない舌癌

kouseikaikiji_no18OL_1_03 kouseikaikiji_no18OL_2_07舌の右下面に痛みを感じて、総合病院の口腔外科受診された60歳代の男性です。舌下面に径15×15㎜の潰瘍が出来ていて、生検を行ったところ、がんが見つかった方です。転移も疑われたのでPET検査を行いました。その結果が図1の全身像と、図2の舌がんの部分です。この方は幸いにも舌がんの部分のみに集積を認め、転移はありませんでした。

 

 

 

 

 

転移のある舌癌

kouseikaikiji_no18OL_3_03 kouseikaikiji_no18OL_4_0370歳代男性で、タバコを一日60本を50年間吸っていた方です。
右舌縁から口腔底に痛みを感じて近くの歯医者に受診したところ、総合病院の口腔外科を紹介され受診しました。舌がんを疑い生検を行ったところ舌がんでした。CT検査では両側の顎下リンパ節が腫大し転移が疑われましたが、その他の転移がわからずPET検査を行いました。
図3は、全身のPET画像で、図4は矢印で示した部分の横断像です。矢印aで示した部分が舌がんの部分で、右舌縁~口腔底に、広汎に進展したがんが認められます。舌の右側に出来た舌がんですが、右顎下リンパ節のみならず、反対側の左オトガイリンパ節(矢印b)にも転移が見られます。
PET検査は全身のがんを調べることが出来ます。この方も舌がんではあっても、全身の状態を調べています。その結果矢印cで示すところにも大きな集積を認めます。これは舌がんが転移したものではなく、食道がんです。つまり舌がんと食道がんが同時に出来、舌がんは痛みにより気づきましたが、食道がんは気づいていませんでした。しかしPET検査によって発見されたのです。
この方は長年多くのタバコを吸い続けた結果が、舌がんと食道がんの同時発生となりました。タバコを吸っている方々には珍しいことではありません。愛煙家の方はお気をつけてください。

再発診断

kouseikaikiji_no18OL_5_12 kouseikaikiji_no18OL_6_1250歳代女性の例ですが、1年前に左舌がんが見つかり、検査の結果転移はないとの判断で、舌の部分切除術を施行された方です。術後は抗癌剤治療を行い経過観察していましたが、切除部分から再びがんが再発してきたために、精査することになった方です。造影CT検査では転移が診断できずにPET検査を行うことになりました。
PET検査の画像は図5と図6です。舌がんの再発は矢印aで、舌左縁深部から傍咽頭間隙に進展する広範な再発が認められます。リンパ節転移は、左深頚領域(b)、上頚静脈(c)および頚静脈リンパ節(d)に見られます

 

 

 

まとめ

PET検査で使用する放射線は、エネルギーの高い放射線を使用していて、金属なども簡単に透過する事が出来ます。このため歯冠に囲まれた舌がんであっても検査はできます。また、PETの最大の特徴である、がんがあれば形が大きくなくても診断することが出来ます。

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