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肥満解消・ダイエット!長続きしないあなたへ ~がんばらなくても取り組めるちょっとしたコツ~

医療法人社団福祉会 高須病院 看護部 副看護部長
 糖尿病看護認定看護師 日本糖尿病療養指導士
 兵頭裕美

こんにちは!
前回のワライフ秋号では、自分らしい豊かな人生のために大切なこととして「肥満解消・運動習慣・禁煙」の3点を挙げてご紹介しました。
そこで、今回はその中から「肥満解消」に焦点を当てて、今からでも取り組めるいくつかのコツをお伝えしたいと思います。

①体重測定の工夫

肥満傾向のある人は、体重を気にしています。しかし、体重計にはあまり乗りたくないものです。なぜなら、体重が増えている自分を認めたくないからです。逆に体重計に乗る習慣を付けると、食事や運動に気をつけるようになります。体重計といってもいろいろなタイプがありますが、おすすめは体重の変化がよくわかる100g単位のデジタル体重計です。デジタル表示の体重計でも、機能・色・デザインなど多くの種類があります。数字が大きく表示されるもの、体脂肪率や内臓脂肪のチェックができるもの、50g単位で測れるものなど、楽しく体重測定を続けられ、長くつきあえそうな体重計を選ぶとよいでしょう。
次に、体重測定のタイミングです。あなたはいつ体重を測定していますか。体重計をどこに置くかで測定のタイミングが決まることもあります。一般的な置き場はお風呂の脱衣所ですが、寝る前に測りたいなら自分の部屋、食事のときなら食卓の横、出かけるときなら玄関など、いろいろな状況が考えられます。どこに体重計を置けば忘れずに測定を続けられそうかという視点で置き場所も工夫してみてください。減量をするときには、1日に2回(起床時と夕食後)の体重測定がおすすめです。起床時は1日の中で一番少ない体重、夕食後は一番重い体重だからです。1日の体重の変化を知り、1日の食事内容を振り返るのも大切です。
体重測定の工夫、もう一つは「記録をつけること」です。体重記録をグラフ化すると、自分のがんばりを確認することができます。よく歩いたり運動した日には、体重が減少するのもよくわかります。旅行に行くと2~3kg 体重が増えることもあります。日記代わりに食事内容や外食、運動などもあわせて記録すると、体重変化の理由が見えてきます。体重の増減だけでなくその理由に目を向けることで、自分の生活を見直すきっかけにもなるでしょう。

②肥満は伝染する!?

2007年にアメリカにおいて、友達が肥満し始めると自分自身が将来肥満になるリスクが57%増加するという研究報告がありました。兄弟姉妹間で40%、配偶者間でも37%増加するそうです。肥満は遺伝も関係していますが、血縁関係のない友達や配偶者間でも増加することから、生活環境も大きく関係していることがわかります。肥満は伝染しませんが、生活環境が似通ってくることで肥満の連鎖が起きるのです。
生活習慣のひとつとして、太っている人は座っている時間が長いという研究結果があります。やせた人に比べると太っている人は1日2時間半以上長く座っているそうです(図1)。姿勢の維持や話す、歩く、話すなど、日常生活におけるエネルギー消費を、NEAT(ニート・Nonexercise Activity Thermogenesis・非運動性活動熱産生)といい、これが体重の増減に重要な役割を担っています。太っている人(BMI平均33)が、やせた人(BMI平均23)と同じ時間だけ立ったり動き回ったりするようになれば、1日平均約350kcalのエネルギー消費量が増え、1年間に15 kg の減量につながる可能性があるそうです。

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また、周りによく食べて太っている人がたくさんいると「自分はそんなに食べていない」と思うものです。逆に、周りの人がやせていて食事に気をつけていると「もう少し食事に気をつけなければ」と思います。同じ大きさの図形でも取り巻く図形によってその大きさが違って見えることを、エビングハウスの錯視といいます。

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このように本来の自分の姿を勘違い
しないために、生活環境をうまく変えていけるといいですね。とくに周りにいる減量成功者の話を聞けば、成功につながるヒントが得られるかもしれません。

③太りやすい食べ方、
 太りにくい食べ方

秋号で内臓脂肪がたまりやすい食生活を紹介しました。今回はその中から「はや食い」に焦点を当てて対策をご紹介します。
「はや食い」と肥満の関係を見てみましょう。大学生(28歳・女性)1695人を対象とした調査をご紹介します。自己申告による食べる速さ5段階とBMIの関係を見ると、食べる速さが速い人ほどBMIが高いという傾向にありました。「とても遅い」と自己申告した人と、「とても速い」とした人との間には、BMI約2.4の差がありました。この年代の平均身長は157cmですから、5~6kg の体重差があることになります。このように、太りやすい人ははや食いの傾向があるのですが、太ると胃の通過時間も速くなります。正常体重者は、食べ物を食べると口から入って2~3時間で胃を通過します。それに対して肥満者は、内臓脂肪が増えているので胃が変形しています。

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そのため胃の通過時間が速くなるのです。やせると胃がもとの形に戻るので少しの量でも満足感が得られるようになります。これがやせると「胃が小さくなった」と感じる原因のひとつかもしれません。
はや食いをやめるためにどんな工夫ができるでしょうか?「よく噛んでゆっくり食べましょう」といいますが、まずは「よく噛む」効果を知ることで意識を高めましょう。

<咀嚼の3効果>
  1.満腹中枢が活発化し
    食べ過ぎを自然に抑制する。
  2.内臓脂肪分解を促進し脂肪の
    合成を抑える。
  3.酸素消費量は上昇し全身の
    新陳代謝を促進させる。

ゆっくり食べようと考えただけではなかなかうまくいかないときは、どうすればよいでしょうか?はや食いの人を見ていると、箸をずっと持ったまま食べています。太りやすい人はあまり噛まなくても飲み込む能力が高いのかもしれません。そのような人は、箸置きや細い箸、小さなスプーンを使うのも一法です。ほかにも、硬くて噛み応えのある物を食べる、野菜から先に食べる、ゆっくり料理を提供してもらう、利き手と反対の手で食べるなどの小さな工夫も効果が期待できます。自分ができそうな方法を試してみてください。

④肥満者は刺激に弱い

ある研究で、ケーキの写真を肥満者と正常体重者に見せて機能的MRIで調べたところ、肥満者では大脳の視覚野と前頭葉が正常体重者と比べて大きく反応したそうです。つまり、肥満者はおいしそうな物の刺激により強く反応する傾向があります。刺激に弱い人の場合、目の前に好きな物があるのに我慢していると、ストレスがたまってしまいます。そのような場合は、菓子類を目につくところに置いておかない、匂いに弱い人は匂いを漂わせる店を避ける、スナック菓子やせんべいは小袋で買う、おなかが空いたときに買い物をしない、バイキングで食べ過ぎてしまう人は食べ放題の店を避けるなど、刺激を減らす工夫をしましょう。
継続のコツは「我慢する」よりも「減らす」工夫をすることです。自分の分を食べ終わったらすぐに歯磨きをする、間食をしたら30分歩く、買い物リストを作り余計な物は買わない、テレビを見ながら食べないなどの工夫も効果が期待できそうです。

今回は、「肥満解消」に焦点をあててちょっとした工夫やコツをお伝えしました。100点満点を目指してがんばりすぎて3日で終わってしまうのではなく、60点くらいを目標にして長く続けることが大切です。まずは、「これくらいならできそうかな?」と思うことから気軽に始めてみましょう!

引用参考文献(図1~3は①より引用)
①坂根直樹著:「Dr.坂根のやる気がわいてくる糖尿病 ケア」:第1版:医歯薬出版株式会社:2009
②稲垣暢也監修:「モチベーションUP!糖尿病教室」: 第1版:南山堂:2013

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