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糖尿病を正しく知ろう!

医療法人社団福祉会 高須病院 看護部 副看護部長
 糖尿病看護認定看護師 日本糖尿病療養指導士
 兵頭裕美

あけましておめでとうございます。昨年に引き続き、今年もこの『ワライフ』の紙面で糖尿病をはじめとした生活習慣病について、皆様のお役にたつ情報を提供させていただくことになりました。改めまして、よろしくお願いいたします。
前回までは、肥満解消・運動習慣・禁煙などに取り組むための生活習慣改善に焦点をあてたコツをお伝えしました。今回は、わたしの専門でもあります「糖尿病」について少し詳しくお伝えしたいと思います。

糖尿病ってどんな病気?

糖尿病とは、血糖値が慢性的に正常範囲を超えて高くなる状態をいいます。血糖値とは、血液内のブドウ糖の濃度のことで、食物中の三大栄養素のひとつである炭水化物からつくられます(図1)。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンです。膵臓にある膵島のβ(ベータ)細胞とよばれる細胞で作られ、血糖値に応じて分泌されます。糖尿病はインスリンの分泌が低下したり、肥満などでインスリンの効きが悪くなり、インスリンの作用が不足する(=高血糖が続く)と発症します。

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なぜ高血糖が問題なの?

血糖値が高い状態が続くと体中の血管の障害を引き起こし、目の網膜・腎臓・神経に障害を与え、さらに心筋梗塞・脳梗塞・足壊疽の原因となり、健康を害するからです。最近では、糖尿病は、歯周病・うつ病・認知症・骨粗しょう症・がんの発症の危険を高めることも明らかになってきました。これらは決して他人事ではなく、以前、夏号でもお伝えしたように「国民病」ともいわれるほど増加しているのです。そこで、糖尿病と言われたことがない人、自分には関係ないと思っている人にも正しく糖尿病について知っていただき、知らない間に糖尿病になっていた、合併症が進んでいたという状況にならないようにしなくてはなりません。

糖尿病の診断

糖尿病は自覚症状に乏しいため、健診を受けて初めて高血糖に気づくことが少なくありません。糖尿病の診断には、「血糖値」と過去1~2カ月間の血糖値の状態を確認できるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を用います。HbA1cが6.5%以上で、なおかつ空腹時血糖値が126mg /dl以上、随時血糖値が200mg /dl以上、75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)の2時間値が200mg /dl以上のいずれかが認められた場合に糖尿病と診断します。

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糖尿病の検査を知ろう

①血糖値(Glu・BS)
採血した時点での血液中のブドウ糖の量がわかります。早朝空腹時血糖とは、前日の夕食後10~12時間絶食した状態で採血した血糖値のことです。随時血糖とは絶食に関係なく採血したときの血糖値のことです。随時血糖は、薬や食事・運動などで大きく変動します。
。②HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
過去1~2カ月間の血糖コントロールの状態がわかります。HbA1cは糖尿病の診断やおもに治療効果の判定に用いられる検査です。赤血球の赤い色の成分をヘモグロビン(Hb)とよびます。このHbにブドウ糖が結合したものがHbA1cです。Hbは身体のすみずみに酸素を運ぶ仕事をしながら身体の中を約4か月間駆けめぐります。その間、ブドウ糖はHbにくっついたり離れたりを繰り返しています。しかし、過食やインスリン不足によりブドウ糖が一度にたくさん増えたり、間食をしたりインスリンの力が弱かったりして長時間高血糖状態が続くと、Hbはブドウ糖を振りほどくことができなくなりHbA1cが増えていきます(図3)。一度結合したブドウ糖はHbが寿命を終えるまでは決して離れません。すなわち、HbA1cの上昇は、過去に高血糖状態があったことを表しているのです。したがって、HbA1cを測定することで血糖コントロールが順調であったか、そうでなかったかを確認することができます。血糖値は検査前だけの絶食や健康管理でかなり改善してみえますがHbA1cは継続的な状態をみているので、その場しのぎは通用しません。

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③75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)
75gのブドウ糖が溶けている飲み物を飲み、その後の血糖値やインスリンの分泌量などを調べる検査です。方法はまず飲み物を飲む前に一度採血をします。その後飲んだ30分後、60分後、90分後、120分後に毎回採血を実施し、血糖値やインスリン量などの変動を調べます(図4)。

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糖尿病の合併症に関する検査

①糖尿病網膜症
定期的な視力検査や網膜の状態を確認する眼底検査があります。
②糖尿病神経障害
触覚や振動覚などの知覚、腱反射などを検査します。音叉、ゴム製のハンマーなどを使用した簡単で痛みを伴うことのない検査です。
③糖尿病腎症
血液検査で、BUN(尿素窒素)やCRE(クレアチニン)を測定します。腎機能が悪化すると血液中に増加してきます。尿検査で、尿蛋白、尿中アルブミンを測定します。腎機能が悪化すると尿中に漏れ出してきます。なかでも尿中アルブミンは腎機能の悪化を早期に発見できる検査項目です。
④動脈硬化症
糖尿病患者さんは動脈硬化になるリスクが高いです。脂質検査も合わせて確認しましょう。「総コレステロール」は血液中のコレステロールの総和です。「中性脂肪(TG)」は高くなると動脈硬化の発症および進行を促進します。「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」は体内の余分なコレステロールを肝臓に戻す働きがあります。血管壁に溜まったプラークの掃除役です。「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)」は肝臓で合成されたコレステロールを各細胞に運びます。LDLコレステロールが多いと体内に余分なコレステロールが増え、血管壁にプラークをつくりやすくなり動脈硬化の原因となります。HDLコレステロールとLDLコレステロールはバランスが大事です。LDLコレステロールが基準値内でも、お掃除役のHDLコレステロールが少ないのはリスク大です。
また、当院では動脈硬化の程度、血管年齢をみる検査として、ABI(足関節上腕血圧比検査)、FMD(血管内皮機能検査)も可能です。

糖尿病の治療、合併症予防のために

糖尿病は残念ながら、治らない病気です。それは、糖尿病が発症したときには、すでにインスリンを分泌させる力が低下しているからです。しかし、発症から間もない時期や境界型糖尿病の時期に、適切な運動や食事を継続し体重を減量することで、血糖値の改善が認められ糖尿病治療が必要なくなることもあります。糖尿病の大きな柱は、食事療法・運動療法・薬物療法で、これらは患者さん自身が日常生活の中で行っていくものです。HbA1cを7.0%未満に保つことで合併症が起こりにくくなります。もし、糖尿病と診断された時、すでに合併症が進行していたとしても、血糖コントロールを良好に保つことで合併症の進行を抑えることができます。糖尿病の治療は継続することが大切です。一人で頑張るのではなく、専門の医療スタッフと相談しながら治療を進めていくことが、上手に糖尿病治療を進めていくコツのひとつといえます。
 当院では、糖尿病患者さんにご自身の生活の中で継続できる療養方法のコツを習得していただくための糖尿病教育入院(金曜日から土曜日の2泊3日コース)を行っています。新しい年のスタートに生活習慣を見直すひとつのきっかけにして、より健康な生活を目指してみてはいかがでしょうか?

参考文献(図1.3.4は①より引用)
①稲垣暢也監修:「モチベーションUP!糖尿病教室」: 南山堂:2013
②矢作直也・大西由希子著:「メディカルるるる糖尿 病編」:株式会社SCICUS:2014

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