肥満と減量について考えてみましょう


医療法人社団福祉会 高須病院 看護部 副看護部長
 糖尿病看護認定看護師 日本糖尿病療養指導士
 兵頭裕美

 こんにちは!ついこの前まで「あけましておめでとう」と言っていたのに、あっという間に3月になろうとしています。年末年始が過ぎ、ちょっと食べ過ぎ飲み過ぎが続いたかな?などと思うのもつかの間、これから歓送迎会シーズンも来るということで体重を気にされている方も多いでしょうか?そこで、今回は肥満と減量についてお伝えしたいと思います。

肥満とは?

 肥満とは、脂肪組織が過剰に蓄積した状態をいいます。肥満の程度を表す指標のひとつがBMI(Body Mass Index)です。BMIは、「体重( kg )÷身長(m)÷身長(m)」で計算されます。このBMI25以上を肥満と定義します。また、BMI22くらいが合併症の発生が最も低く、肥満度が高くなるほどほかの疾病を伴いやすくなります。BMI25以上のうち、肥満による健康障害がある場合、あるいは内臓肥満蓄積がある場合を「肥満症」と診断し、減量治療が必要な疾患であると考えます。肥満に起因あるいは関連し、減量を要する健康障害としては、2型糖尿病・耐糖能障害、脂質代謝障害、高血圧、高尿酸血症などの代謝障害、脳梗塞などの動脈硬化性疾患があります。これらは脂肪細胞の質的な異常に起因すると言われています。また、睡眠時無呼吸症候群、脂肪肝、変形性膝関節症や腰椎症、月経異常などは、脂肪組織の量的な増加に基づくと考えられています。

皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満

 肥満についてCT撮影で詳しく調べると、皮下脂肪が増えているタイプ(皮下脂肪型肥満)と腹腔内内臓脂肪が増えているタイプ(内臓脂肪型肥満)に分類できます。この内臓脂肪型肥満に代謝疾患(糖尿病・高血圧・脂質異常症)や血管障害(動脈硬化)の合併が多いことがわかりました。そこで、BMIのみでなく内臓脂肪蓄積の指標としてウエスト周囲径(男性85 ㎝以上、女性90 ㎝以上)も測定します。

脂肪細胞の働き

 近年、脂肪細胞のびっくりするような働きが明らかになってきました。従来、脂肪細胞は単なるエネルギーの貯蔵庫と考えられていましたが、それだけでなく脂肪細胞からさまざまな物質(アディポサイトカイン)を分泌していることがわかったのです。そして、アディポサイトカインには善玉と悪玉があり、血液凝固、炎症、食欲、脂肪代謝に深く関わっており、インスリン抵抗性や動脈硬化の管制塔の役割をしていることがわかってきました。

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肥満と密接に関連するアディポサイトカイン

 肥満して脂肪細胞が肥大化すると、各種アディポサイトカインの量が変化し、インスリン抵抗性が増強します(インスリンの効きが悪くなります)。動脈硬化や血栓形成を抑制する作用も、肥満によって促進側に傾きます。

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 たとえば、食欲やエネルギー代謝をコントロールするレプチンのよい作用は肥満状態では発揮できず、インスリン感受性増強効果や抗動脈硬化作用があり善玉アディポサイトカインといわれるアディポネクチンの分泌は肥満によって低下します。また、血栓形成を起こしやすくするPAI—1は肥満時に脂肪組織から分泌され、腫瘍壊死惹起物質であるTNF—αは肥満した脂肪組織から多量に分泌されインスリン抵抗性を高めることが発見されました。このように、アディポサイトカインの産生や作用は肥満と密接に関連しています。これらのアディポサイトカインの産生はとくに腹腔内内臓脂肪で盛んなことが証明されており、代謝疾患や血管障害が内臓脂肪量と相関が高い理由のひとつと考えられています。

適切な減量目標は?

 肥満の治療法には、食事療法、運動療法、薬物療法、行動療法などがあります(図3)。まず大切なことは減量目標の設定です。最初の2〜3ヶ月間の目標は1ヶ月あたり2〜3kg 減程度にするのがよいといわれています。3ヶ月の目標は現体重の5〜10%減というところです。食事療法は、標準体重(「身長(m)×身長(m)×22」)×25kcalを1日の摂取カロリーとします。ただし、BMI30以上なら×20kcalで計算します。男性1500kcal、女性1200kcal程度にしないと痩せにくいようです。

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 運動療法は、BMI40以下が対象です。中等度の有酸素運動(はや歩き、軽いジョギング、階段昇降、自転車、水中歩行、ラジオ体操など)を1回10~30分、週3~5日以上が勧められます。薬物療法は、マジンドール(サノレックス®)のみです。BMI35以上が対象で、使用期間は3か月と制限されています。行動療法は、肥満につながる問題点に気づき、不適切な行動を修正し望ましい行動を促進する方法です。

体重の減り止まりとリバウンド

 体重が少し落ちるだけで血糖値は改善します。また、脂質異常症や高血圧も改善します。これは、減量早期に腹腔内内臓脂肪が速やかに減少することがひとつの理由と考えられています。しかし、体重の減り止まりが問題です。いわゆるダイエットなど食事療法だけで減量すると筋肉量が落ち、基礎代謝が低下し、同じカロリー摂取では体重が減らなくなると考えられています。無理なダイエットを続けていると、ここで嫌になってまた食べだして、体重が元に戻ってしまいます(リバウンド)。しかし、運動は筋肉量を落としません。運動を併用することが長期的な減量効果につながります。

肥満しやすい人の「くせ」と「ずれ」

 肥満しやすい人は、「水を飲んでも太る」と思っていても実際にはそれなりに食べていたり、「噛まずに早食いする」などのくせがある場合が多いものです。特徴的な「くせ」や「ずれ」には以下のようなものがあります。

・「水を飲んでも太る」「食べてないのにやせない」という発言と実際の飲食との間にずれがある。

・「噛まずに早食いする」「多めに作らないと気がすまない」「満腹感が感じられない」「つい手が出てしまう」などのくせがある。

・「食事の時間が不規則である」「ファーストフードを利用する」などの食事のリズム、食べ方、内容などの偏りが高率に認められる。

 まず、それらの「くせ」や「ずれ」に気づくことが大切です。そして、治療効果を目でみて確かめられる「グラフ化体重日記」をつけること、ゆっくり噛んで食べること、「ながら食い」をやめること、などが役立ちます。その他、肥満解消のための方策は前々回のワライフでもご紹介しました。頑張りすぎて3日で終わってしまうのではなく、長く少しずつ続けられる方法を見つけて実行してください。

 次号からは、糖尿病治療の柱と言われる「食事」「運動」「薬」について順にお伝えしていこうと思っています。

引用・参考文献(図2、3は①より引用)
①石井均著:「糖尿病ビジュアルガイド」:医歯薬出版 株式会社:2008
②日本循環器病研究振興財団監修:厚生労働省HP「肥満ホームページ」 
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/himan/

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