ワライフ認知症講座 第9回


認知症講座0

コウノメソッドを理解する

抗認知症薬の効果と副作用

 現在使用されている抗認知症薬は4種類あります。(アリセプト、レミニール、リバスタッチパッチ=イクセロンパッチ、メマリー)。アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる効果が期待されていますが、最近では副作用の問題点が多く報告されています。医療者だけではなく本人、家族、介護従事者も知識を持ち、知ることが大切です。
〈ケース1〉79歳の女性、アルツハイマー型認知症と診断されました。2年前から買い物のミス、料理の味付けの変化、気分の落ち込みが見られました。初診時の改訂長谷川式スケール(HDS−R・認知症診断の知能検査)は30点満点の26点であった。その後抗認知症薬であるアリセプトが処方され、3㎎から開始し、2週間後に5㎎へと増量されました。開始後には気分も良くなり、特に副作用もなく調子が良くなりました。家族は、薬を開始してから明るくなったことで喜んでいると言われています。
 現在も5㎎を継続して服薬しています。
〈ケース2〉82歳の男性、アルツハイマー型認知症と診断されました。数年前から幻視、暴言、夜間せん妄が出現していました。(HDS−R)は23点で、家族の介護負担は増加していました。抗認知症のアリセプトが処方されましたが、3㎎の服薬で以前に比べよく怒り、介護抵抗も増幅されたため医師に相談したところ、薬を飲んで反応したということは効いている証拠、また、症状が悪化したのは認知症が進行したからしょうがないという見解でした。その後5㎎に増量され、歩行状態も悪化、体の傾きも見られました。その後、誤嚥性肺炎にて入院しました。
〈ケース3〉80歳の女性、アルツハイマー型認知症と診断されました。幼少期の頸部骨折のため、左右の足の長さが7㎝違い、歩行障害があるため長距離の歩行が困難な状況。数年前から物忘れが出現したため、認知症外来を受診し、抗認知症薬が開始されました。3㎎の時は調子が良かったが、5㎎に増量された時には、本人には不調の実感がありました。その後度々徘徊が見られ、数キロ離れた場所まで歩いてしまい、その異変に気付いた介護職員に発見され大事には至りませんでした。医師と相談し抗認知症薬を3㎎に減量し、現在は穏やかに過ごしています。

image8

・ケース1の場合は、服薬を始めてから調子が良くなり、副作用もなく本人・家族とも満足のいく結果となりました。しかし、このようなケースばかりではないとの認識は持っておきたいでしょう。
・ケース2の場合、そもそもアルツハイマー型認知症だったのかという疑問があります。幻視、夜間せん妄など、レビー小体型認知症が疑われる症状はあったのです。現在ではレビー小体型認知症の適応となったアリセプトですが、薬剤過敏性(※通常より薬が効き過ぎる状態)があるこの疾患では、副作用が強く出現するため、増量と共に副作用が出ることは容易に推測できます。医師から、「効いている証拠」、「症状の悪化は進行のため」と言われていますが、薬の副作用とは考えないのでしょうか?
 これでは家族はたまったものじゃないし、規定通り処方してその副作用で困っていても、あとは介護でなんとかして下さいでは困ってしまいます。
・ケース3の場合、歩行障害があるにも関わらず数キロも歩いてしまう状況に目を疑ってしまいます。本人も5㎎に増量された時点で不調を感じているし、徘徊も増えたことから、副作用として捉えなければいけないのです。現在社会問題にもなっている認知症高齢者の徘徊による事故も懸念されます。

適量には個人差がある?

 抗認知症薬は中核症状に対し、実行機能障害や記憶障害などの改善に期待されている一方、周辺症状に対してはその副作用から介護負担が増えることもあるという認識も必要なのです。それはただ認知症が進行したからではなく、抗認知症薬の副作用かもしれないと気づくと同時に、4種類の抗認知症薬の特徴も知っておくことが必要です。副作用の一例ですが、アリセプトは、消化器系の副作用や易怒性が高まる、レミニールは吐き気が起こるため、胃切除の既往があれば注意が必要、リバスタッチパッチは皮膚トラブルを起こしやすい、メマリーは眠くなることがあるので転倒に注意するなど、家族や介護従事者が目で見てわかる変化があるのです。また、3㎎なら穏やかだったが、5㎎に増量したら介護負担が増えた、調子が悪くなったなど、個々に合った量があるという症例も多く報告されています。しかし、現在の抗認知症薬の処方方法は、事実上の増量規定があり、アリセプトなら3㎎を2週間、その後5㎎に増量しなければならないとされている為、医師は副作用があったとしても増量するしかないのです。体型も立派で元気な高齢者もいれば、小さくやせ細り、体力がない方もいます。1種類の洋服を規則なので全員同じものを着なさいと言っているようなものです。血圧や糖尿病などの薬はその都度医師の判断で用量を変更できるが、抗認知症薬は規定通りに処方しなければ、医師が副作用を確認しても減量(※一時的には認められている)したり、低用量で維持することも認められていないのです。また、状態が悪化しても副作用だと気づいていない医師もいまだ多くいると言われています。

image9

抗認知症薬の適量処方を実現する会

 11月23日に東京で設立総会が行われました。参議院議員の山東昭子氏、厚生労働省老健局長の三浦公嗣氏、認知症専門医、弁護士らが集まり、この問題について記者会見を行いました。問題の重要性から報道各社も多数参加され、全国に発信され、多くの反響を得ています。
 筆者も記者会見の中、副作用による事例をケアマネジャーとして発表してきました。この会の目的は、抗認知症薬の処方用量を医師に判断させてほしいということなのです。実際に副作用が強く出たため減量して治療をしていた医師がレセプト(診療報酬)をカットされてしまうなどの報告もあり、またそのレセプト審査も都道府県によって異なるという現状も浮き彫りになりました。
 抗認知症薬の適量処方を実現する会では来年の夏を目標に、全国から広く事例や副作用の実態を調査、募集を行う予定です。今後の超高齢化社会、認知症患者800万人時代に向け一刻も早くこの問題を解決し、認知症高齢者が安心して暮らすことができる環境を整備しなければいけません。
 この記事を読まれた方々も自分の家族・ご利用者様に思い当たることがないか、確認してみるとよいでしょう。
 抗認知症薬の適量処方を実現する会ではホームページで実際の事例を掲載しているのでご覧ください。また、実際の事例をお持ちであれば、是非ご報告頂きたいと思います。より良い医療・介護を実現するために現場の声を上げていきましょう。
 ご意見・ご感想もお待ちしております。

image10

«前の記事 介護・健康コラム 次の記事»