WEBワライフ

三河・遠州地域の介護施設検索・介護情報総合サイト「ワライフ」

喉頭がん

光生会0_03

喉頭

喉頭はのどの辺りの部位で、いわゆる「のどぼとけ」と言われている部分です。上部は舌の根っこの部分で、下部は気管につながっています。喉頭の中心となる臓器は声帯で、肺からの空気が気管を通過して声帯を震わせることによって声を発生させます。喉頭上部は中咽頭とも接続しています。咽頭は食道とつながり食べ物を胃に送る器官です。この接続部には喉頭蓋と言うふたがあり、食べ物が気管に入らないようにふたをして誤嚥を防ぎます。当然のことながら空気はここを通過して肺に行きます。

喉頭がん

 喉頭は部位的に三つに区分けされています。声帯がある部位を声門といい、それより上を声門上、下を声門下といいます。がんが出来るとそれぞれ「声門がん」、「声門上がん」、「声門下がん」と言います。喉頭がんの60~65%は声門がんで、30~35%が声門上がんです。声門下がんは極稀ながんとなります。

kouseikaikiji_no26_06

 喉頭がんの発生頻度は少なく、がん全体の0.6%程度です。しかも50歳代から80歳代にかけて急激に増加します。また女性よりも男性の方が10倍程多いです。喫煙による影響の多いがんでもあり、喉頭がんの90%以上が喫煙者です。また飲酒の影響も大きいと言われています。
 喉頭がんは声門がんと声門上がんがほとんどですので、両者についての自覚症状を記します。声門がんは嗄声から始まります。これは声が、低いがらがら声、雑音の入ったざらざらした声などになり、さらにひどくなると、呼吸困難な症状も出ます。嗄声が1ヵ月以上続くときは、喉頭がんを強く疑います。声門上がんでは、いがらっぽさ、異物感、食べ物をのみ込んだときのつかえ感や痛みなどの症状がみられます。
 喉頭がんは他のがんに比べて早期から自覚症状があります。ただ嗄声などの自覚症状が、喉頭がん独特のものではなく、他の疾患でも常時起こりうる症状なので、喉頭がんを関連付けるのが困難なことが多いです。

症例一 早期声門がん

kouseikaikiji_no26_11

最初の方は早期の喉頭がんの方です。夏ごろから嗄声に気づきましたが、夏風邪かなと思い放置していました。しかし一向に良くならずに、4ヵ月後に耳鼻科受診しました。そこでのどを見たところ右声帯に白板を認め、生検して調べたところ扁平上皮がんでした。
 直ちにCT、MRI等で精査しましたが、転移の有無がわからないためにPET検査となりました。図2が喉頭付近のPET画像です。矢印で示した所が喉頭がんで、リンパ節などへの転移は認められません。また図3は声帯付近の横断像で、CTの画像にPET画像を重ねたFusion画像です。この画像からは、右声帯上方に限局していて、他には浸潤していない事がよくわかります。このことから早期の喉頭がんとして治療が開始されました。

症例二 声門上がん

 のどのつかえ感を自覚して、一ヵ月後に受診した方です。のどを見たところ、のどの右側に腫瘍を認め生検を行ったところ、扁平上皮がんが見つかりました。既に肉眼でもわかる大きさになっていたので、治療方針を決定するためにPET検査を行いました。その結果が図4と図5です。

kouseikaikiji_no26_03

 腫瘍は声帯の上のほうにあり、大きさは13×12×30㎜と大きなものでした。幸い、PETではリンパ節移は見られなかったので、直ちに放射線治療と化学療法を開始しました。一年近くは大きな変化はなかったのですが、一年後のCTで右喉頭に腫瘍らしきものが出現したので、PET検査を行ったところ喉頭右側に再発(図6→)が見られ、右頚部リンパ節に転移(図6→)が見られます。この後、喉頭は手術によって切除し、リンパ節郭清も行っています。
 残念なことにこの方は、さらに一年後には肺転移(図7→)が見つかりました。

まとめ

 喉頭がんのことを耳にすることが多いのは、著名人に喉頭がんの方がいらっしゃるからです。
 少し前ですが忌野清志郎氏が2009年の5月に喉頭がんで亡くなっています。喉頭がんに気づいて入院したのが2006年7月でした。当初、放射線治療と化学療法で治療する予定でしたが、放射線の影響で声を失うことを嫌った忌野清志郎氏は、代替医療を選択しました。一時は活動を再開しましたが、2008年7月に腸骨に転移が見つかり再び治療に専念しました。治療中も執筆活動などはしていたようですが、2009年に58歳の若さで没しています。
 また、最近では、つんく氏が2014年に喉頭がんの手術を行い、2015年には再発して喉頭を切除して声を失っています。

 喉頭がんもいかにして早く見つけるかが治療の決め手となります。症例一の方は声帯にがんが出来る声門がんで、かなり早期から嗄声などの自覚症状があります。しかし、嗄声と喉頭がんを結びつけることが出来ず、出現から4ヶ月目に病院に行きました。この時もがんとは思いもかけず受診しています。幸いなことに、声帯には腫瘍形成する前の白板として見つかり、しかもPET上でも声帯にがんは留まっていて、転移もありませんでした。
 一方、つんく氏は嗄声の自覚から7~8ヶ月してから病院に行き、喉頭がんと診断されました。当初は早期喉頭がんと報道されていましたが、約一年後に再発が確認され、声を失うことになりました。今後細心の経過観察が必要な状態です。
 症例二の方はのどのつかえ感から一ヶ月で病院に行っていますが、既にがんは大きくなっています。これは自覚症状が声帯がんより出にくい声門上がんのためです。

 喉頭がんは喫煙の影響が大きく、今回紹介した方は全て喫煙者です。無論発症時には禁煙されている方もいらっしゃいますが、全ての方が喫煙者です。がんは早期発見が最も大事ですが、がんにならないための生活習慣も大切です。

前の記事 介護・健康コラム 次の記事