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ワライフ認知症講座 第10回

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認知症という診断名にご注意を

認知症を一括りにしない

 よく介護施設などで「ああ、認知ね」という会話が多く聞かれ、医療機関でも「認知症ですね、お薬を処方します」と言われます。しかし、ここが認知症介護の分かれ道になるのです。
 そもそも「認知症」とはどのように理解すればよいのでしょうか。心臓の病気であれば心筋梗塞、狭心症、不整脈など、またそれらの中でも更に細かく分類されており、治療方法や薬剤も異なるのです。それらを心臓病として画一的に治療やケアをしてしまうことが誤りであることは理解できるでしょう。認知症も様々な種類、タイプに分類されているのです。もちろん治療方法やケアに関しても個別の特徴があるのです。また、様々な症状から認知症の理解(種類やタイプ)を難しくする要因が、症状や種類が常に変化するなど、必ずしも分かりやすい症状が初期から出現しない場合があるからです。それは、アルツハイマー型認知症と診断されても、数年後にレビー小体型認知症を発症したり、脳血管性認知症を発症し、混合型認知症となるなど、標的は動いていくのです。これらの事から現在の認知症学は、対症療法であるという考え方になっていると言われています。

認知症講座第10回_03

認知症という複雑な領域

 認知症医療には未だ解明できていない領域が多くあるのです。ただ一つ確実に言える事は、医療介入によって症状が悪化するなど、介護負担が増えることは避けなければなりません。代表的な症状で物忘れという症状がありますが、それはアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭葉変性症でも起こります。また、treatable dementia(早期に発見して適切な治療を施せば完治する可能性のある認知症、「硬膜下血腫・水腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、ビタミンB1/B2欠乏症等」という分類の認知症もあり、同様に物忘れなどの症状が出現します。後者は適切に診断されれば治療の効果も期待できるのですが、変性疾患である前者は未だ確立された治療方法がないと言われています。また、両者が合併しているケースもあるので、治る認知症としてマスコミで取り上げられている正常圧水頭症でも、期待を持って治療したが改善しなという場合もあるのです。それは変性疾患である認知症が基礎にあったからです。これだけ複雑な領域になっている「認知症」を一括りにして治療やケアをすることに疑問を持たなければいけません。進行を遅らせる効果が期待されている抗認知症薬にも多くの課題があり、認知症=抗認知症薬という構図が、時に介護をより大変なものとしているのです。医師から診断名は認知症と言われたら、どのタイプの認知症かを聞くことが重要です。例えば前頭側頭葉変性症のピックタイプの方に、抗認知症薬であるアリセプトが処方されれば、周辺心理症状が悪化するなど、介護の負担は大きくなるのです。レビー小体型認知症の方に規定量の処方をすれば、身体機能が悪化し、ADLを低下させるという報告もあります。しかし、アルツハイマー型認知症や軽度認知機能障害(MCI)の方が抗認知症薬の処方を受ければ、活気が出た、趣味を再開することが出来たなど、治療の恩恵を受けることもあるのです。これらのことから、いかに「認知症」と一括りにし、治療を開始することが危険であるかを理解することができるでしょう。私たちが出来る事は、各認知症特有の症状を理解し、治療による二次的な介護負担を起こさないようにするかを考えなければいけません。各認知症の症状にはどのようなものがあるのか、もし、医師からアルツハイマー型認知症と診断されたら、その根拠を聞いてみる必要があります。「物忘れがあるから」、「海馬の萎縮があるから」、「改訂長谷川式スケールが〇〇点だから」など、医師の診断には根拠があるはずです。
 しかし、一般的にアルツハイマー型認知症の主症状は、「記憶力の低下、空間見当識の低下(迷子になりやすい)、薬の飲み残しが増えた、海馬の萎縮がある」などですが、それらの症状は他の認知症でも確認することができるので注意が必要です。また、当初はアルツハイマー型認知症として治療を開始していても、数年後にはレビー小体型認知症の症状が現れることもあるので、医師に誤診だということは言えないのです。その時点では限りなくアルツハイマー型認知症であったからです。しかし、初めから明らかにピック症状やレビー症状があるにもかかわらず、認知症と一括りに診断をし、治療を開始することになれば、医療を受ける側としてしっかりと医師に対して意見を伝えなければなりません。
 それでも診断の根拠がなく、説明もして頂けないようなら要注意です。「ピック病やレビー小体型認知症の可能性はありませんか?」と聞いてみて、その根拠を示してもらいましょう。
 治療を受けるのは医師ではなく家族であり、介護をするのも家族です。

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第二回認知症治療研究会

 神奈川県横浜市(パシフィコ横浜)で第二回認知症治療研究会が開催されます。前回の第一回目には筆者も発表させて頂きました。今回の参加枠は大幅に増え、1000人規模の研究会になります。認知症治療研究会は医師のみならず、看護、介護、介護家族にまで幅広く参加枠がありながら、最新の認知症医療の知識が得られるので、真剣に認知症を学びたい方には是非参加して頂きたいと思います。参加資格には、会員登録をすることが前提ですが、内容が分からないのに会員登録することに迷っている方向けに、一般参加枠が設けられる予定ですので、問い合わせてみるとよいでしょう。
《開催日・三月十三日》

認知症ケア実践塾

 2016年9月、第一回目の開催を予定している勉強会をご紹介します。
 認知症ケア実践塾は、名古屋フォレストクリニック院長である、河野和彦医師が提唱している「コウノメソッド」を基本とし、介護職が認知症医療の理解を深め、日々の業務に直ちに実践できるような内容を計画しています。多くの認知症関連の研修会では解決できなかった問題を実際の事例を交え、その対処法を学ぶことで、今後予想されている認知症大爆発時代に対応できるスキルを身に着ける勉強会です。参加希望者は原則、介護従事者に限りますが、職種に関係なく学べるように計画をしています。
・ケアマネジャーとして認知症のケースに不安や悩みを抱えている
・介護事業所で、様々な認知症の症状に振り回されている
・施設入所者の様々な症状でスタッフが疲れ切っている
・今後ケアマネジャーとして働きたいので認知症について勉強したい
・認知症研修会には行ったが実際の解決にはならなかった
 開催回数は全6回で。基本全6回の参加が条件となります。参加人数は少人数制を予定しておりますので、定員になり次第、締め切らせて頂きます。
受講代は無料ですが、資料代、会場費の負担金として1回/1,000円が別途必要になります。
開催場所:刈谷市・産業振興センター
JR刈谷駅から徒歩3分
講師:㈱ミヤビハウス 小板建太
※申し込み詳細は次回のワライフでお知らせします。

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