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ワライフ認知症講座 第12回

ワライフ認知症講座_小板様-01

介護者が賢くなる時代

認知症ケア実践塾

 全国で数多くの認知症関連の研修会が開催されていますが、その多くがアルツハイマー型認知症を中心に行われています。もちろん、認知症の割合ではアルツハイマー型認知症が一番多いとされていますが、介護現場で困っている症状の第一位ではありません。また認知症治療の副作用で苦しむ割合もアルツハイマー型認知症より、他の認知症の方が多いとも言われています。認知症を「認知ね」と一括りにすることがとても危険なケアであると認識しなければいけません。
 認知症ケア実践塾ではそれぞれのタイプを理解し、症状別の対応やケアの考え方、医療に対する関わり方、薬の知識を明日から実践できるようになっています。

本当にアルツハイマーですか?

 78歳女性、5年前から物忘れの症状が出現したため、認知症専門医を受診しました。性格は温厚で、介護ヘルパーの仕事を長年しており、足腰も丈夫で自転車で広範囲までヘルパーとして日々働いていました。物忘れの症状で受診した結果、アルツハイマー型認知症と診断され、アリセプトが処方されました。3㎎から開始し、その後5㎎に増量。数か月後に現れた症状が家族の介護負担を増幅させていました。家族が困っている症状は「徘徊」です。頻繁にどこかに行ってしまい、その都度警察から連絡を受ける事を繰り返していました。明らかに認知症治療を開始してから始まったと家族は言います。他の症状は、家では入浴しない(デイサービスでは入る)、毎朝3時に洗濯をする、食事は決まったものしか食べない(朝は食パン、夕食は助六寿司)、過食による体重の急増、デイサービスでは決まった席でないと怒り出す、人が言った言葉を復唱する(オウム返し)などの症状があります。家族は、軽度認知機能障害の疑いがある夫との二人暮らし、キーパーソンは近隣に住む娘、受診や服薬管理は娘が行っています。デイサービスに通うことが出来たのは最近のことです。治療開始後は興奮が強く、家から飛び出し、向かいの川に自ら入り「死んでやる」と大騒ぎをしたこともありました。このような症状であっても本当に「アルツハイマー型認知症」なのだろうか? 多くの医師は、「認知症が進行した」と言い、認知症介護研修や認知症ケア関連の書物では「本人の気持ちを大切に」、「地域で温かく見守ろう」という対応になってしまいます。家族は今困っているのです。この現状をどのように理解し、解決していかなければならないのでしょうか。この事例を「あぁ認知ね」で済ましてしまえば、家族は近いうちに限界に達してしまうでしょう。介護職としてどのように考え、支援していくかがこの家族の分かれ道になるでしょう。この事例を読んで「アルツハイマー型認知症」だと思いましたか? 解決する方法が思い浮かびましたか? またアルツハイマー型認知症以外の疾患が思い当たりますか?
 認知症ケア実践塾では、このような事例をふまえて、実際の対応策や、各認知症のタイプを理解し、何に気づかなくてはいけないのかを解説していきます。今まで介護職が踏み入れる事を敬遠してきた、「認知症医療」の領域へ足を踏み入れなければいけない時代になったのかもしれません。在宅介護を支える方も、施設介護で支える方も、忍耐の介護を改め、認知症の様々な症状に対する疾患別知識を身に着け、「楽な介護」を実践していかなければいけません。また、自宅で介護している方も、素人だからと医療や介護に任せるのではなく、「家族が賢くなる」を実践することで、より楽な介護生活を過ごすことができるでしょう。
 認知症ケア実践塾では、職種に関わらず認知症を勉強できるようにプログラムされており、介護家族様や認知症介護に興味がある方など、どなたでも受講することができますので、是非ご参加下さい。開催回数は参加状況や内容によって変更する場合があります。

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