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PET健診で見つかる大腸がん

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大腸がん検診

 大腸がん検診として、一般的に行われているのは便潜血検査です。この便潜血検査を行った場合の陽性率と、大腸がんの割合は、1,000人の便潜血を調べると、陽性の人は約60~70人、さらに大腸がんの人は1~2人と言われています。この検査目的は、大腸がんがありながらそれを見逃してしまう事をできるだけ避けるよう採用された検査です。そのため便潜血が陽性の場合でも大腸がんでない確率の方が、高いのです。大腸がんでなくても便潜血が陽性になってしまうのは、痔からの出血があったり、大腸憩室から出血があったりして陽性になるためです。
 当院のPET健診においても便潜血検査は行っています。2016年7月末までの健診数は3,725件です。この内便潜血陽性の方は260件となっています。約7%の方が便潜血陽性で、右記の一般の統計と同じ割合です。
 次にPET検査にて大腸がんを疑った方は37件で、実際に大腸がんであった方は34件、残り3件は大腸ポリープでした。大腸がんであった34件の内、便潜血陽性であった方は21件、便潜血陰性で大腸がんのあった方は13件でした。

症例一、便潜血陽性の早期大腸がん

 最初の方はPET検査で大腸がんを疑い、便潜血が2本とも陽性であった方です。図1はPET晩期像のお腹の部分の画像です。矢印で示す膀胱右上の集積が大腸がんです。大腸がんが出来た部分はS状結腸です。

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 図2は、CT画像にPET画像を重ねたFusion画像です。上段が早期像、下段が晩期像です。どちらもCT画像で認められるS状結腸に、FDGの高集積が見られます。ただし早期像と晩期像では位置が変わっています。これは腸が動いたためで、大腸がんが移動したためではありません。
 図3は内視鏡検査により、S状結腸で見つけた大腸ポリープです。このポリープの大きさは、約径2㎝と比較的大きなものです。このポリープを切除し病理にて調べたところごく一部に高分化型の腺癌が含まれていました。切除した断端は正常細胞で、治療は以上で終わりです。

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症例二、便潜血陽性の大腸ポリープ

 次の方は便潜血陽性で、PET検査でも横行結腸に集積のあった方です。大腸内視鏡では、7箇所にポリープを認めその最大のものは、横行結腸中央部の径1㎝のポリープでした。細胞診の結果、Grade 3or4という診断でがんになる手前の状態でした。
 図4はPET画像で右側が早期像、左側が晩期像です。やはり両画像の間で、食事をしているために胃や腸が動いて異なった位置になっていますが、横行結腸の中央であることは判断できます。

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症例三、便潜血陰性の早期大腸がん

 この方は健診時の検査では、便潜血は2本とも陰性でした。しかしPET検査にて、直腸にFDGの集積が見られ(図5:矢印)、大腸がんを指摘した方です。図6のFusion(上段)では、直腸がガスで膨らんでいるために、直腸壁にFDGが高集積していて、同スライスのCTでは充実したポリープが見られます。ただしこれはPETの画像と重ね合わせた結果、ここにポリープがあるとわかっての判断で、CTだけの画像で判断することは出来ません。

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 図7は内視鏡で見たFDGの集積の見られたポリープです。約1㎝ぐらいの大きさで、表面、切除面は正常な細胞でしたが、内部の一部ががんになっていた早期の大腸がんです。

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症例四、便潜血陰性の進行大腸がん

 最後の症例は、体調不良を訴えて総合病院に受診した方です。その時腫瘍マーカーの値はかなり高い値でした。そのため命は長くないと言われショックを受けた方です。ただその後の検査は、かなり日数が空いていて、その対応に不信感を抱いて、PET健診を受診する決心をしました。
 図8がその時のPET画像です。上行結腸に大腸がん(図8:赤→)があり、すでにお腹全体にがんが広がっており(腹膜播種:黄→)、両肺に複数の転移(緑→)も見られます。
 図9は内視鏡でみた大腸がんですが、内視鏡で見えるのはがんの一部で大腸の外側にも広がっています。そのために腹膜播種が起きています。
 健診時においてこの方の便潜血は、二本とも陰性でした。内視鏡で確認しても出血しているような箇所は見られませんでした。

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まとめ

 大腸がん検診として一般的に行われている便潜血検査は、大腸がんを見落とさないための検査です。この検査を行った時の陽性になる確率は約7%程です。この7%の内大腸がんである方は最大で約3%です。
 当院のPET検査でも、便潜血陽性の方は約7%です。この内大腸がんであった方は約8%です。当院の大腸がんの発見率が高いのは、受診される方が比較的高齢の方が多いためと思われます。ただし重要なことは、便潜血陰性でも大腸がんの方がいて、大腸がん全体の4割に当たります。しかも、最後の症例のように手遅れになるまでも、便潜血陽性にならない方も含まれていることです。
 便潜血検査は、あくまでも多数の人を簡便に、かつ安い費用で行う検査です。当院のPET健診での結果では、便潜血だけでは大腸がんの方の4割は見つけることは出来ませんでした。しかも最後の進行大腸がん以外の方は、腫瘍マーカーは基準値以内でした。
 便潜血検査が陰性であっても、大腸がんはないと100%保証はできないのです。

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