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ワライフ認知症講座 第18回 認知症と歩行障害

歩行障害とは

 高齢者介護の現場にいるとよく耳にすることがある歩行障害。歩けない又は歩行が困難な状態を表すときに使う言葉です。多くのケースでは外科的な疾患(大腿骨頚部骨折、変形性膝関節症等)が原因で歩行に何らかの障害が出現しています。

 神経的疾患(脳卒中等の後遺症、神経疾患、末梢神経疾患など)でも同じく歩行障害が出現してきます。代表的なものでは脳梗塞を発症した後に半身麻痺の状態になり歩行が困難な状態になってしまう方を多く見かけます。このような場合はリハビリを積極的に行い機能の回復を目指していきます。それらのリハビリの専門家が理学療法士、作業療法士、言語聴覚士なのです。

認知症による歩行障害 「歩けないのではなく歩かない

 ここではもう一つの歩行障害を考えてみたいと思います。リハビリによって回復する歩行障害とは別の「認知症による歩行障害」です。特に脳梗塞や整形外科的疾患は何もないのに歩行ができなくなっていく方を見ることがあります。家族に聞いてみると、「長い間車いすを使っているから筋力がなくなった」「年のせいで動く量が減ったので歩けなくなった」などの理由を聞くことがあります。そのような場合に考えてみる必要がある疾患が認知症です。

 そこで大切なキーワードが「歩けないのではなく歩かない」です。もちろん認知症の様々な症状に使用する抗精神病薬の過剰投与で歩けなくなっている場合もあるので注意が必要です。認知症講座でご紹介しているように認知症には様々なタイプがあり、4大認知症としてアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症(≒ピック病)があります。それらの認知症では障害を受ける部位が異なり、アルツハイマー型認知症は頭頂葉(空間認識、皮膚感覚)※海馬の萎縮も代表的)、レビー小体型認知症は後頭葉(視覚情報)など、タイプによって異なります。

前頭葉の機能が低下

 脳萎縮の部位によって様々な症状が出現してきますが、症状が進むにつれ多くの場合、前頭葉の機能不全に移行していくと言われています。その前頭葉の役割として、思考、判断、感情、理性、意欲、運動機能などがあります。前頭葉の機能が低下してくるとそれらの役割の遂行ができなくなってくることから「アパシー」の状態になります。(※気力がなく感情がない様子、うつ病と間違われることがあるので注意が必要)各行動に対し指令が出ていないような感じを受けることがあります。食事を食べられないではなく「食べない」(※美味しくない、好き嫌いではない)思考が停止しているような状態のことです。

 その中でも歩行障害としてとらえた場合には、「フロンタルアタキシア」という概念を考える必要があります。

 どのタイプの認知症も最後には前頭葉に障害が移行すると言われていますので、やがて歩けないのではなく、歩かないという状態になっていくと考えられています。そのような状況で身体機能を中心としたリハビリだけで改善を期待することはできないでしょう。コウノメソッドではフロンタルアタキシアに対して、「歩け」という指令シグナルを送る治療を推奨しています。

(補足:フロンタルアタキシアとは、運動器に問題がないのに、前頭葉機能不全(歩こうとする発動性などの障害)のために「歩かない」状態。「歩けない」のではないため、改善が見込める。

歩行と介護負担の問題

 河野医師によると、外来で家族に歩けるように治療をしましょうと言うと稀に「やめてください、介護が大変になります」と言われる家族もいるそうです。しかし、本人にとっては歩けるという喜びがあることも真実です。

 それらをどのように解決していくかはとても慎重な課題です。もし、歩行や車いすからの立ち座りに改善があれば、介護者が目を離した時に立ち上がり転倒をして、大腿骨頚部骨折など介護負担が増えてしまうリスクもあるのです。

「本人の喜び」と「家族の介護負担」 どう解決するか

 その一方、立ち座りの改善があれば、トイレでの介助が楽になる、リハビリパンツの交換が楽になるなど介護負担は軽減されるでしょう。

 事故につながるデメリットとしては、方向や物の分別に障害がある方がどんどん歩けるようになれば、どのようなことが予測されるかは想像がつくでしょう。

 歩行に対する本人の喜びや期待、家族の介護負担をしっかり見極める必要があるでしょう。

ADL(日常生活動作)とは、普段の生活の中で行っている行為や行動のことです。例えば、食事や排泄、移動や整容、入浴などと言った、日常生活を送る上で最低限必要な基本的行動を指します。

 

認知症ケアアドバイザー講座

 9月14日(木)に大阪で第二回認知症ケアアドバイザー講座が開催されます。第一回目の名古屋講座では、介護従事者、医療従事者、介護家族の方が参加されました。多くの受講生は認知症の知識が少なく、アルツハイマーは聞いたことがあるという程度でした。受講後には、4大認知症の特徴や対処法、副作用についての知識を学ぶことができたと報告してくださいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一般社団法人認知症ケアアドバイザー協会

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