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ワライフ認知症講座 第20回 なくならない副作用

なくならない副作用の問題

 この認知症講座で幾度となく掲載している「抗認知症薬の副作用問題」が、現在でも多く報告されています。その一例をご紹介します。

 

 

 

 

妻への暴力・暴言

 80代男性、物忘れを心配した家族が神経内科の受診を勧めました。HDS-R(※1)は22点、高血圧、糖尿病の既往があります。食事、排せつなど身の回りの生活で特に困るような行動はありませんが、日にちの間違え、意欲低下などが見られました。

レビー小体型認知症と診断

 妻と未婚の長男の3人暮らしで、長男は日中仕事へ出かけています。本人には病識はなく、数か月かけて様々な検査を行いました。その結果は「レビー小体型認知症(※2)」と診断されました。主治医から現在はまだ初期の段階であるため、進行を遅らせる治療を開始すると言われました。心配をしていた家族は初期の認知症という言葉で安心したと言っていました。

 治療は、物忘れに対してアリセプトが処方されました。3㎎から開始、2週間経過を見ましたが、大きな変化はなく、相変わらず活気はありません。その後5㎎へ増量されました。その頃からから妻の介助へ対する抵抗が出現してきたと言います。身体機能に関しても、動きにくさを妻は感じていました。心配した家族は再受診時に医師へ相談をしましたが、「薬での治療を継続するか中止するか」と問われ、継続していくことを了承しました。

 それからは様々な症状が出現してきました。妻へ対して暴言を言ったり、時には手を挙げることもありました。受診前は生活に支障がなく暮らせていましたが、現在の症状と妻の負担を考え介護保険の申請となり、ケアマネジャーを担当することになりました。

 

 

 

専門職としてのかかわり方

以前は、物忘れ=アルツハイマー型認知症

 今回の診断結果はMIBG心筋シンチ(※3)などの検査から判明しました。このケースでは、治療の過程で副作用が出現してしまったことに気が付くことができませんでした。以前はレビー小体型認知症が知られておらず、物忘れ=アルツハイマー型認知症とされていましたが、多くの医師に知られるようになり、正確な診断がされるようになりました。しかし、診断はできても治療は同じといった状況が続いています。

 レビー小体型認知症の方に適量以上の抗認知症薬であるアリセプトを使用するとADL(※4)の低下、興奮、パーキンソンニズム(※5)、歩行障害などの症状が出現すると、名古屋フォレストクリニック院長の河野和彦医師は警鐘を鳴らしています。ではこのような場合、どのような対応が必要かを考えます。

医師へ薬剤の変更や減量を相談

 まずは現在の薬の副作用である様々な症状から、医師へ薬剤の変更や減量を相談します。今回は抗認知症薬であるリバスタッチパッチへ変更をしていただきました。コウノメソッド(※6)ではレビー小体型認知症への第一選択とされています。アリセプトを中止してリバスタッチパッチへ変更しただけですが、徐々に以前の姿に戻ることができました(リバスタッチパッチも用量が多いと副作用が出現する)。妻の負担も減り、現在も自宅で穏やかに生活をしています。介護サービスを利用することもありませんでした。

抗認知症薬は副作用が出現しやすいことを意識する

 現在でもこのようなケースは多く報告されているのですが、気が付いていない場合が多いのです。認知症医療の特殊性として、未開拓な分野であること、高齢者は副作用が出やすい、認知症の症状は様々で副作用であると気が付かない、などがあります。抗認知症薬は使用方法によっては副作用が出現しやすいということを意識することが重要です。薬剤が悪いわけではありません、用量の問題なのです。介護従事者はこれらを踏まえて助言していくことが大切です。

 

 

用語解説

※1 HDS-R

 HDS-Rとは、長谷川式簡易知能評価スケールのことで、長谷川和夫氏によって作成された簡易知能検査です。

 20点以下で、認知症の可能性が高まるとされています。また認知症であることが確定している場合は、HDS-R20点以上で軽度・11~19点の場合は中等度・10点以下で高度と判定されます。

※2 レビー小体型認知症

 アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症の次に多いと言われる認知症の一つです。脳内にたまったレビ-小体という特殊なたんぱく質により脳の神経細胞が破壊されおこる病気です。

 症状には現実にはないものが見える幻視や、手足が震えたり筋肉が固くなるといった症状が現れます。歩幅が小刻みになり、転びやすくなります。

※3 MIBG心筋シンチ

 心臓疾患や糖尿病による自律神経障害の存在を知る方法で、パーキンソン病やレビー小体型認知症を診断するときに用いる検査です。

※4 ADL

 ADL(英: activities of daily living)とは、日常生活動作のことで、食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴など生活を営む上で不可欠な基本的行動を指します。

※5 パーキンソンニズム

 パーキンソン病によくみられる、手足のふるえ、筋肉のこわばり、歩行障害などの症状を「パーキンソニズム」と言います。これらの症状があるからといって、パーキンソン病であるとは限りません。

※6 コウノメソッド

 河野和彦医師によって提唱された認知症を治療する対症療法です。

 

 

認知症ケア実践講座(基礎講座)

 下記の要領で開催致します。ご関心のある方はぜひご受講ください。

開催日:2018 年3 月14 日(水)

午後13 時30 分~16 時30 分 (開場:午後13 時~)

内  容

①認知症医療・介護の現場及び実態

②認知症の病型を見極める(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症(≒ピック病)、脳血管性認知症など

③認知症治療薬・抗精神病薬などの副作用について

④現場で役立つ実践トラブル対処法

講  師

小板 建太(一般社団法人 認知症ケアアドバイザー協会 代表理事)

会  場

愛知県産業センター ウィンクあいち 1109 号会議室 (定員40 名)
住所:名古屋市中村区名駅4 丁目4-38

受講資格

医療・介護従事者、介護家族、認知症ケアに関心のある方

受講費用

テキストをお持ちの方:5,000 円(税込)

テキストをお持ちでない方:6,700 円(税込)

※お申込みはホームページ又はFAX からの受付となります。FAX 0566-93-5302 先着順となります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

認知症介護メール相談を無料で受け付けていますのでお気軽にお問合せください。

一般社団法人認知症ケアアドバイザー協会

Email       miyabi-house@katch.ne.jp

 

 

 

 

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