社会福祉法人 聖隷福祉事業団 保健事業部 健康コラム第4回 認知症の予防・早期発見について~健康診断の意義と限界~


健康寿命を妨げる要因の一つは認知症

 介護などを必要とせず、自立して日常生 活を送れる期間を「健康寿命」と言います。 都道府県別にみますと、男女ともに最長 の県と最短の県とで3年ほどの差がありま すが、愛知県および静岡県は男女ともに上 位に位置します①。健康長寿を妨げる主な要因ですが、第1 位はロコモティブ・シンドローム( 22. 7 % )。 第2位は脳卒中( 18. 5 % )。第3位は認知症 です( 15. 8 %) ②。認知症の予防は個人の健康寿命に欠かせないばかりか、労働人口の確保、社会保障費の節約など、社会経済的にも重要な課題なのです。(文中①~⑥は下記「参考文献」を参照してください。)

 

 

認知症の危険因子と防御因子

65 歳以上の日本人の 約 15 % が認知症

 2010年代前半、 65 歳以上の日本人の 約 15 % が認知症です。加齢は認知症の危険因子(持っていると発症の確率が上がる因子)として最大です。70 歳未満では1割未満で すが、それ以降、年齢が上がるにつれて有病率は指数関数的に増加し、 80 〜 84 歳の2 割、 85 〜 89 歳の4割、 90 〜 94 歳の6割が認 知症です③。しかも、各年代とも女性の方が男性より も高率であり、女性であることは危険因子 のひとつと言われています④。 また、ある種の遺伝子も危険因子として知 られています。全世界の認知症の過半数を占 めるアルツハイマー型認知症における「アポ リポ蛋白E遺伝子」は有名ですが、あくまで 原因遺伝子のごく一部に過ぎません⑤。

 

対処の余地のありそうな危険因子

 一方、対処の余地のありそうな危険因子 としては、糖尿病、脂質異常症、喫煙、うつ病、 頭部外傷の既往、大酒家、高血圧、肥満など数十種類あり、いずれかひとつを持つと発症の確率は2倍ほどに上昇します。逆に、持っていると発症の確率が下がる 因子を防御因子と言いますが、週3回以上 の運動、地中海式食事(野菜、全粒穀物、魚、 赤ワイン等⑥)、 30 分以内の昼寝、社会参加、 高い教育などが知られています。

 

認知症予防のために 取り組みたいこと

 以上より、私たちが認知症予防のために 取り組みたいことは、まず適切な食事、運動、 睡眠、飲酒、それと禁煙です。それでは、これらの取り組みが適切に行えているかどうか、どうしたら把握できるでしょうか。ここで役立つのが健康診断です。これらが不適切である場合、検査結果に異常が出 やすくなります。各検査の判定が、「異常なし」、「心配なし」なら一安心ですが、「経過 観察」、「要再検」、「要受診」となった場合は、 不適切なところがあるのかもしれません。 異常な判定のまま放置しないようにしま しょう。健康診断の代わりに人間ドックを 受けていただくと、不適切な点に対し医師 や保健師からアドバイスを受けられ、さらに判定がその場で少し軽くなることもあります(例えば、要再検が経過観察となる)。

 

精神的な活動を身近な人が評価することも認知症予防

 さらに認知症予防のために取り組みたい ことは、趣味(創造的・芸術的活動)、知的刺激(読書・パズルなど)、家族以外との交 流といった精神的な活動です。こうした精 神的な活動がうまくいかなくなると、もの 忘れや気力の減退、感情の起伏の激しさなどが出現し、さらには軽度認知障害から認知症へと進行しやすくなります。これらの 善し悪しは健康診断や人間ドックの検査結果に必ずしも反映されませんので、身近な人に率直に評価してもらう必要があります。 率直に言ってくれる人の存在は、かけがえ のないものですね。そういう人が居ない場 合や対処方法が分からない場合には、地域 包括支援センター、民生委員、精神保健福 祉センター(公的機関)、メンタルクリニッ ク、物忘れ外来などに相談しましょう。

 最初は勇気が要るかもしれませんが、い ざ行ってみると、ああ来てよかったなと思うものですよ。

 

【参考文献】

  • ①厚生労働省 2013年国民生活基礎調査
  • ②2015年度 厚生科学審議会 第5回健康日本21(第二次)  推進専門委員会 会議資料
  • ③厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業   都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応   平成23年度~平成24年度総合研究報告書
  • ④認知症疾患診療ガイドライン 2017
  • ⑤遺伝医学やさしい系統講義18講 メディカル・サイエンス・インターナショナル、2013年
  • ⑥健康寿命を延ばすサイエンス 日経サイエンス編集部編、2016年

 

 

社会福祉法人 聖隷福祉事業団

聖隷健康診断センター

医師 葛西 英二 氏

 

 

 

WEBワライフ「社会福祉法人 聖隷福祉事業団 保健事業部 健康コラム第3回 女性の病気について、予防・早期発見」

WEBワライフ「社会福祉法人 聖隷福祉事業団 保健事業部 健康コラム第5回 糖尿病について」

«前の記事 介護・健康コラム 次の記事»