医療法人社団 和恵会 超高齢社会で知っておきたいこと 新連載第1回 「健康的に過ごすために重要なこと」 


健康寿命を延ばす方法

 2010年調査で、私が住む浜松市の健康寿命が政令指定都市の中で男女共に日本で一番長いと報告されました。健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のことです。誰もが少しでも長く自立して健康的に過ごしたいと思いますが、平均寿命と健康寿命の間には、男性で約9年、女性で約13年の差があるとされています。つまり、その期間は介護が必要な状態です。それでは、なぜ介護が必要になってしまうのでしょうか。健康寿命を延ばすには、介護が必要になった原因を調べ、その方法について知ることが重要です。本稿では、疫学調査から分かったことを中心に健康寿命を延ばす方法について説明します。

介護が必要になった主な理由

図1.65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要になった主な理由(厚生労働省「国民生活基礎調査」平成25年)

 

介護が必要になった原因には、はっきりと性差が

 図1は、介護が必要になった原因を厚生労働省が調査したものです。総数を見ると脳血管障害が主な原因であることが分かります。しかし、男女で分けて見ると、確かに男性では脳血管障害が26.3 %と多いのですが、女性では少なく、代わりに女性では関節疾患、骨折・転倒が29.5 %と非常に多いことが分かります。介護が必要になった原因には、はっきりと性差があるのです。

 

20年の自立度の変化

 図2は、日本人に経年的な自立度の変化を、20年の長期間にわたり男女別に調査したものです。この調査によると、男性は比較的若い時期に急に自立度が低下、介護が必要になる人たちが19.0 %もいます。急に自立度が低下する病気、それが脳血管障害です。脳血管障害とは、大まかにいうと動脈硬化が原因で血管が破れたり (脳出血)、詰まったりする (脳梗塞) ことで脳の細胞に栄養や酸素が供給されなくなり、脳の機能に障害が起こる恐ろしい病気です。 突然発作が起こり、障害が起こった部位よって麻痺や失語症、嚥下障害、意識障害などの症状が現れます。このため、脳血管障害発症後は、後遺症のため自立して生活できなくなることが少なくありません。

 

男性は中年期より動脈硬化予防すること

 この結果から、男性は中年期より動脈硬化予防することが重要であるということが分かります。それには、禁煙は絶対ですが、メタボリック症候群の対策が重要です。メタボリック症候群とは、内蔵肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさり、心臓病や脳血管障害などの動脈硬化性疾患をまねきやすい病態です。糖尿病は認知症の危険因子にもなるので、食事管理や適度な運動を行うことが重要となります。特に、運動は、虚血性心疾患 (狭心症や心筋梗塞)、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、大腸癌などの発症を予防するだけではなく、メンタルヘルスにも改善効果があることが知られていますので、習慣的に行うことが大切です。

女性は閉経後、緩やかに活動性が低下

 次に、図2の女性の方を見てください。女性の多くは、男性とは異なり緩徐に活動性が低下、自立できなくなっていくのが分かります。女性は、閉経後に女性ホルモンが低下する影響で、男性に比べ骨粗鬆症になりやすく、筋力低下も重なり緩徐に活動性の低下が進みます。実際に、つまずいて転んだだけでも骨折して、寝たきり状態になることも珍しくありません。骨粗鬆症を予防するためには、カルシウムの摂取 (牛乳や乳製品の摂取が効率的です) と日光浴に加えて、ウォーキングや筋力トレーニングなど骨に刺激が加わる運動が必要です。しかし、それでも骨粗鬆症になることがあります。閉経後の女性は、医療機関で定期的な骨密度の評価をすることをお勧めします。

 

運動器の障害による移動機能の低下した状態を 「ロコモティブシンドローム」と提唱

 日本整形外科学会では、運動器の障害による移動機能の低下した状態を表す新しい言葉として 「ロコモティブシンドローム (和名:運動器症候群)」 を提唱しました。自分で気が付いて予防できるように 「ロコチェック」 と、ロコモティブシンドローム対策としての運動 「ロコトレ」 をホームページで紹介しています。医療機関でパンフレットも配布していますが、片足立ちが出来なくなった、つまずくことが増えた、15分程続けて歩けなくなったりしたなど思い当たる方は、ロコモティブシンドロームの危険があります、かかりつけ医に相談するなどして対策してください。

 

対策方法は男女で大きく異なる

 介護が必要になった原因を知ることで、男女で対策方法が大きく異なることが分かって頂けたと思います。男性は中年期から特に動脈硬化を予防すること、女性では骨粗鬆症とロコモティブシンドロームの対策が健康寿命の延長に重要であることを理解し、今日からでも予防に取り組んで頂けたら幸いです。

 

  • 医療法人社団 和恵会 理事長
  • 湖東病院 院長
  • 医学博士

猿原 大和 氏

 

 

 

 

«前の記事 介護・健康コラム