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胃がんのPET診断

胃がんの概要

胃がんは、かつては日本人のがんのなかで最も多いがんでしたが、現在では胃がんの罹患率は減少しています。これは日本人の食生活の変化(米食の減少など)によって減少しています。しかし喫煙や、飲酒の習慣の多い男性では、いまだに罹患率は、第一位です。
胃がんの発生は胃の内側にある粘膜内の細胞から発生します。はじめは極小さな細胞単位の大きさですが、年単位の時間をかけて5㎜程度の大きさになる頃から発見可能となります。つまり胃がん検診で見つかったがんは、発生から数年経過していたことになります。ただし、この進展の速さはがんの種類や、分化度によって異なります。
胃がんの進行は、がん細胞が胃の壁のなかに入り込んで胃の外に出て近くにある臓器(大腸、肝臓、膵臓など)に浸潤したり、胃の内側に突出する場合と、水平方向へ広がるものがあります。胃の内側に突出する場合は比較的早く発見できますが、水平方向へ広がるもの、特に胃の壁の中を広がるように浸潤し、粘膜表面には現れない「スキルス胃がん」はバリウム検査や、内視鏡検査でも早期発見が難しいです。

 

胃がんの検診

胃がんはかつては、日本人の中で最も多いがんでした。そのため、他のがん検診に比べて、胃X線検査による胃がん検診が最も早くから行われ最初の胃X線検診は、1955年長野県智里村の住民165名に対して実施されています。1960年には宮城県で胃がん検診車が使用されました。このように胃がん検診は、最も歴史があり、機器の開発および技術開発も盛んに行われてきたのが胃X線検査です。さらに最近は、胃内視鏡検査なども行われています。
胃X線検査はバリウムを飲んで胃の粘膜を観察する検査です。この検査は早くから行われており、それだけに方法も様々工夫され、検査精度も高い検査となっています。ただし、粘膜の変化を画像化するために、粘膜が変化しないスキルス胃がんなどは発見が困難です。
胃内視鏡検査は、胃の内部を直接観察するので検査精度が高い検査です。しかし検査を行うまでの準備、検査中および検査後の処置等も注意点が多く、検査を行う医師も限られるため、検診で行うことは少ないです。

 

PETによる胃がんの検査

PET検査で早期胃がんを見つけることは困難です。それは早期胃がんの場合粘膜面にそって進展することが多く、厚みが非常に薄くなるために、PETで使用する薬剤(FDG)が集積しても検出できないためです。また胃の粘膜は生理的にFDGを集積することも診断を困難にしています。
しかし進行胃がんではがんをよく見つけることも出来ますし、何よりも転移診断に有効です。

①FDG-PETでは見つけれない早期胃がん(症例1)
最初の症例はPET健診では見つけることのできなかった早期の胃がんです。図1は健診時のPET画像です。全身どこにもFDGの異常集積はなく健康な身体のように思われます。矢印で示した部分は胃粘膜に淡く集積したFDGです。特に異常集積は認められず、この画像からは胃がんは指摘できません。この方は、PET健診後胃カメラを行い、粘膜下の胃がんが見つかりました。図3が胃カメラの画像で、矢印の部分です。後日この方は、内視鏡下で粘膜剥離術でお腹を切らずに治療しました。

図1〜3

②PET健診で見つかった胃がん(症例2)
次の症例はPET健診で見つかった胃がんです。特に自覚症状もなく、退職前にPET健診を受けたいと思って受診された方です。
PET検査(図4)にて胃体下部から胃角部、胃小弯内側(図4赤矢印)にFDG高集積域を認め、胃がんと診断しました。さらに膵体部頭側(図4黄矢印)にも集積を認め転移していることを示しています。直ちにこの方は胃カメラを行い図5の矢印で示すように広範囲にわたってがんが広がっていることがわかります。
胃がんは早期では自覚症状がないばかりか、かなり進んでも自覚がない場合があります。この方もその一例です。

③胃がんの転移診断としてのPET検査(症例3)
症例3の方は胃がんと診断され、治療前に転移の状況を知るために、紹介で来院された方です。CT検査にて右肺に結節影が散在し、気管支拡張像が見られ、肺転移を疑い造影CTを施行しましたが、転移を確認できず、また他の転移もわかりませんでした。
図6がPET検査の画像です。赤矢印が胃がんで、黄色の矢印が転移になります。既にお腹や縦隔のリンパ節、さらに肺にも複数の転移があることがわかります。

図4〜6

まとめ

胃がんはかつてほど多いがんではありませんが、未だに罹患率・死亡率ともに上位です。
PET検査では早期胃がんは、見つけにくいがんの一つですが、進行がんになるとFDGが胃がんにもよく集積し診断しやすくなります。しかもリンパ節転移など、他の臓器に転移すると、小さな転移でも見つけることが出来ます。これは症例3のように造影CTを行っても、肺転移が確診出来ませんでしたが、PETでは転移を指摘でき、しかもCTでは指摘できなかったリンパ節転移も指摘できます。

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