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肺癌のPET診断 1

 

肺癌の統計

肺癌は、日本人の癌死亡者数、第1位の癌です。肺癌になる方は、男性では2番目に多く、女性では4番目に多い癌ですが、癌死亡者数では男性で第1位、女性でも第2位です。つまり肺癌になると死亡する方が多い癌です。
肺癌の種類は大きく分けて非小細胞癌と、小細胞癌に分けられます。さらに非小細胞癌は、腺癌、扁平上皮癌と大細胞癌に分けられます。
肺癌の内、腺癌が50%、扁平上皮癌30%、小細胞癌10%、大細胞癌10%です。以前は喫煙の影響で扁平上皮癌が多かったのですが、最近はタバコを吸わなくても癌になる腺癌が多いです。

 

肺癌検診 

肺癌検診としては、胸部X線、喀痰検査、血液検査(腫瘍マーカー)が一般的です。胸部X線を行えば、早期発見が可能に思われていますが、肺の末梢に出来た癌は見つかりますが、肺の入口付近(肺門)に出来た癌は見つかりにくいです。また、早期の腺癌のように、末梢に淡い影にしかならない場合は、胸部X線では見つけることが困難です。ですから、胸部X線で肺癌が見つかった場合は、かなり進んだ肺癌の場合が多いです。喀痰検査は、痰の中に癌細胞が含まれない限り検出できません。また血液検査で癌を検出できるのは、癌がかなり大きくなってからか、転移した場合が多いです。
最近は早期の肺癌の発見のために、低線量の胸部CT検査が行われています。CT検査では肺全体を、約2mmの幅の輪切り画像にして検査します。このため胸部X線ではわからない、肺門付近の癌も、また淡い影でしかない肺癌も見つけることが出来ます。ただし、透過画像であるため質の診断は苦手です。つまり良性の腫瘍であっても、肺癌であっても形が同じであれば区別は出来ません。最終的な確定診断は、気管支鏡などによって腫瘍から細胞を採取して診断します。気管支鏡は肺の中を見る内視鏡ですが、肺の中全てまで届くわけではありません。そのため確定診断できない場合もあります。
PET検査では、腫瘍の代謝を画像化するので、良性腫瘍と悪性腫瘍の鑑別が可能となり、転移・再発の診断を高い精度で行うことが出来ます。ただし、PET検査で使用する薬剤(FDG)は、癌だけでなく、炎症でも集まってしまうので、両者の区別は大変重要です。

 

PETによる肺癌検査

光生会病院のPET検査では、癌検査のうち肺癌の占める割合は18%で、他の癌に比べ最もPET検査を用いています。
検査目的の内訳は、
①肺癌疑い・・・他の検査で肺癌が疑われたが、確定診断できないために行う場合
②病期診断・・・他の検査で肺癌と確定したが、治療するに当たり転移がどこまで広がっているか調べる場合
③再発・転移診断・・・治療が終わり、経過観察中に再発が疑われた場合

①肺癌疑いはPET肺癌検査のうち約45%を占めています。
前記したように胸部X線では肺の中は十分見えず、CT検査のような、詳細な画像でも診断出来ないこともあります。
症例1は、60代男性の例です。胸部X線で異常影が見つかり、胸部CTおよびMRIを施行、肺癌を疑ってPET検査を行いました。図1の上段はCT画像です。右肺の下葉に直径15 mmの腫瘍()が見られます。下段のCTとPETの融合画像では、腫瘍にFDGの集積していないため色が付かず、良性の腫瘍と診断しました。5年後のCTでも大きさは変わらず、癌もできていません。

症例2は40代の女性です。この方も肺癌検診の胸部X線撮影で、異常を指摘された方です。胸部CT検査にて左肺上葉に直径20 mm大の腫瘍が見られ(図2上段)、肺癌を疑って気管支鏡を行いましたが、細胞を採っても癌細胞はなく、肺癌特有の腫瘍マーカー3種類を行っても正常値でした。しかしCT上、癌を強く疑いPET検査を行いました。その結果、PET検査でFDGの高集積を認め(図2下段)、肺癌と診断しました。PET検査は全身の検査を行うので、全身の癌や転移の様子がわかります。その画像は図3です。1→が原発の肺癌ですが、2→にも集積を認めます。2→は、大動脈下リンパ節での肺癌が転移したものです。

図1〜3-01

②病期診断は、PET肺癌検査の約30%を占めています。
病期診断を行う場合は、気管支鏡などにより、細胞診や生検を行って肺癌と確定しているが、CTなどの検査を行っても転移の有無、拡がりの診断が出来ない場合に行います。治療前に病期診断を知ることは、大変重要で、これによって治療方針が決定されます。
症例3は50代女性の方です。夏ごろから咳が続き、11月に胸部X線を撮ったところ右肺に肺腫瘍が見つかりました。肺癌を疑って気管支鏡による生検で、肺癌と診断しました。CTでは大きな肺癌の他に小さな結節影が有り、他への転移が疑われましたが、診断できないためにPET検査を施行しました。そのPET画像が図4と5です。図4は胸部と腹部の全体像、図5は融合画像の断面です。1→が原発の肺癌です。3→は、同肺転移した癌で、2→は右上気管気管支リンパ節、4→は肝臓への転移、5→は左副腎転移です。はCTでも診断できましたが、リンパ節、肝臓と副腎転移は診断できませんでした。

図4〜5-01

③再発診断はPET肺癌検査の約25%を占めています。
再発の手がかりとして、定期的にCT検査を行ったり、血液検査を行ったりしますが、それでも再発を見つけることが遅れてしまうことがあります。
症例4は肺癌と診断されて最初に病期診断目的でPET検査を行いました。それが図6ののPET画像です。1→で示すのが肺癌で、他にリンパ節転移もなく、手術による治療でした。再発を心配されて1年3ヵ月後にPET検査を行いましたが、転移再発はありませんでした()。さらに1年3ヵ月後にPET検査を受けたところ()、2→の様に再発が見られました。この再発はCT検査では診断できず、腫瘍マーカーも基準値以内でした。

図6-01

 

 

まとめ

胸部CT検査は、肺内を細部にわたって診断できますが、それでも質的診断は難しく、良性であるか、悪性であるかの診断はPET検査に依存してることが多いです。また癌と診断してからの転移診断についても、全身の検査ができるPETを使用したほうが、検査効率も良く治療に早く進むことが出来ます。再発診断においても同様のことが認められ、癌の治療・診断においてPETの役割は決して小さくありません。

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