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【連載もの】介護制度について考える 第12回

雪が解けて  愛知大学 地域政務学部 教授 西村正広氏

 

 

 

「激震」からの五か月

八十二歳の父と七十四歳の母の穏やかな二人暮らしが一転したのは平成二十三年の十月、母の脳梗塞による救急入院が発端でした。退院後、右手足の不自由や糖尿病で日々の暮らしや通院が大変な母。そして認知症が徐々に進み、服薬や通院にも支障が出るようになった父。
二人を支えるために介護保険を活用し、ケアマネジャーの知恵を借りながらホームヘルパーや訪問看護を利用し始めました。そんな約五か月間の経緯をこの連載で記してきました。思い起こすとその五か月は、両親の暮らしをとつぜん襲った激震の揺れを少しずつ和らげる期間だったように思います。

 

ヘルパーと訪問看護

そして札幌に平成二十四年の春が来ました。窓の高さまで積もっていた雪が見る見るうちに消え、両親を襲った「激震」も鳴りを潜めました。両親の身の回りのことは週に二回やってくるホームヘルパーさんがやってくれます。一回二時間弱の時間をかけ、居間やトイレ、風呂などの掃除、洗濯を主にやります。母は右手足に不自由がありますが、長年やってきた家事を全部ヘルパーさんに任せるのがいやで、できることは自分でやります。できないことはヘルパーさんにやってもらい、できることは自分でやる。「できないことと」「できること」の区別がだんだんと分かってきて、母とヘルパーさんの役割分担がうまくできるようになればしめたものです。
また、訪問看護師さんも週に一度やってきて、父が服薬を間違えていないか点検してくれます。看護師さんは聴診器を首に下げ血圧計や体温計で健康チェックしてくれます。父の世代は医師や看護師などの医療人には一目置いているようで、その指示には素直に従います。でもホームヘルパーさんにはわがままを言ったり、好き嫌いの表情を露わにして横柄な態度になることもありました。そんな父を見て母がヘルパーさんに詫びると「この世代の男の方はみんなこうですよ」と言ってくれたそうです。
雪が解ければ札幌は別天地。冬は家の中でテレビを見て過ごすことの多かった両親も、庭をいじったり散歩に出たりして外の空気を楽しめる季節になりました。

 

デイサービスを検討

父は庭いじりが好きで、定年退職後は植木や石を整えてこぢんまりとした庭をこしらえていました。認知症が進んでも庭いじりは昔取った杵柄。春が来て草花の手入れを始めました。しかし以前と違って庭いじりで使った道具をしまわずに放置したままにすることが多くなりました。
そんな話を母がケアマネジャーにしたところデイサービスの利用を提案されました。デイサービス(通所介護)は、日中だけ施設に出かけて食事や入浴をしたり、他の高齢者とレクリエーションや簡単な運動などもできる介護保険のサービスです。自宅と施設の送迎もしてもらえます。新しいことを始めるには良い季節。夫婦だけで過ごしていないで他の人と触れ合う機会をつくって生活にメリハリを付けることも大切。考えてみれば母と父は朝から晩まで顔を突き合わせているし、昔からの習慣で母が父の身の回りの世話をしています。父がデイサービスに行っている間は、母も休息を取れます。私はケアマネジャーと共に父のデイサービス利用を検討してみました。

 

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西村正広氏略歴:日本福祉大学大学院修了
社会保険中京病院
ソーシャルワーカーなどを経て現職
専門:社会保障

 

 

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