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介護制度について考える 第23回

西村教授0

入院して(3)

退院に備えて

 元気だった高齢者が病気やケガなどで入院し、入院中に身体が弱ったり認知症が進んでしまうことはよくあることです。病院から「治療が終わったので退院して下さい」と言われても、入院前と違って心身の不自由は残っています。自宅に家族が何人もいて介護してもらえるならすぐに退院できるでしょう。しかし、もともと夫婦二人だけ、あるいはひとり暮らし、そんな高齢者の場合は、退院して自宅に戻るのは困難です。
 無理やり自宅に戻って、老いた連れ合いが介護を担う「老老介護」が問題になっています。その背景には、そうした「受け皿が不十分なまま退院させる」現実があります。
 さて、父が平成二十五年五月にR病院に入院し、ほどなく私は退院後の行き先について検討を始めました。先号で述べたように、退院して自宅に戻った父を、母が「老老介護」するのは無理と判断したので、いずれ退院後は介護施設を利用することにしていたのです。
 一口に介護施設と言っても、その種類や機能、費用などは千差万別です。長期間入れる施設、短期だけの施設。医療的なケアができる施設、できない施設。重い認知症でも入所できる施設、できない施設。介護保険が使える施設、一部使える施設、使えない施設。看取りまで世話してくれる施設、できない施設。そのほかにも、利用料金、介護の質、所在地、評判の良し悪し、入所できるまでの待機期間など、じつに多様な要素を比較検討して選ぶことが必要になります。
 私は札幌市内の介護施設の情報を山のように取り寄せて、父が退院した後、どこの施設を利用したらよいか必死に調べました。

退院の宣告

 まがりなりにも私は医療や介護制度の専門家ですから、そうした準備を自分で始めることができます。でも、たいていの人は退院後の計画を立てるだけの予備知識や情報を持っていません。病院から「そろそろ退院です」と言われて、さあ、これからどうしようということになります。良心的な病院であれば、退院後の行き先等の相談に乗ってくれたり、退院先の施設を探してくれたり、退院までの準備を手助けしてくれたりします。しかし、「退院後のことは知りません」という病院も少なくありません。
 父の入院したR病院は、残念ながら後者でした。父の症状が回復して退院可能になったとたん、R病院の「ソーシャルワーカー」なる職員が母を呼び出し、「もう入院はできません。自宅で介護しないのであれば、次の行き先を探してください」と言ったそうです。そんなことを言われても、母には何の情報も知識もありません。これではまさに病院からの追い出しです。ひどい話です。
 それを聞いた私は、すぐに名古屋から札幌に飛んでR病院に出向きました。そして父の主治医に事情を話し、入所できる介護施設が決まるまで入院を延ばしてほしいと頼みました。主治医は父や母の状況を知っていたので、入院延長を快く承諾してくれました。
 それにしてもR病院の「ソーシャルワーカー」の仕事ぶりは納得できません。「病気が治ったので退院です、あとは家族で何とかして下さい」と言われても、家族は困るのです。
 とりあえず主治医から退院日の延長を許されたので、私は片っ端から介護施設に電話をかけて入所の可否を尋ねました。

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