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ワライフ認知症講座 第8回

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コウノメソッドを理解する

認知症医療を学ぶ

 10月10日に名古屋で、認知症セミナー(認知症は介護者の愛と知恵で必ず改善できる)が開催されました。名古屋フォレストクリニック院長、河野和彦先生による講演で、600名を超える介護家族、介護従事者、医療関係者が参加しました。現在の認知症医療の問題点や薬物療法の知識が中心で、多くの参加者は、目からウロコであったという印象で、介護家族からは、「治療内容の誤りで症状が悪化しているのではないか」、介護従事者は、「現在の服薬内容を再度確認する必要がある」という声が多くあがりました。
 現在、全国に300人を超える「コウノメソッド実践医」と呼ばれる医師団がいます。コウノメソッドとは、認知症を治療する対症療法のこと。河野和彦(医学博士、認知症専門医)によって提唱された認知症の診断と治療体系で、認知症の周辺・心理症状を、陽性症状、陰性症状、および中間症に分類し、それぞれに最も適した薬剤を極力少ない副作用で処方する治療のことです。

認知症講座第8回_1

 そのマニュアル化された治療方法を取り入れ治療を行う医師を実践医と呼んでいます。認知症医療における誤診や不適切な治療で苦しんでいる現状を、目の当たりにしている医師が現在も実践医として増え続けています。
 クリニックの医師が中心ですが、中には市の医師会をあげてコウノメソッドを推奨している自治体もあるのです。
 コウノメソッドは、陽性症状の強い認知症でも家庭介護が続けられるように処方することを最優先として一般公開された薬物療法マニュアルに集約されており、そのコンセプトは、医師と介護者が協力し介護負担を軽くすることや、効果があるものは積極的に取り入れていくというものです。
①家庭天秤法
 薬の副作用を出さないために介護者 が薬を加減すること
②介護者保護主義
 患者と介護者の一方しか救えないと きは介護者を救うこと
③サプリメントの活用
 薬剤と同等、あるいはそれ以上に効 果があるサプリメントも併用する

家庭天秤法

 薬の副作用を出さないために、医師の了解、指示のもとで介護者が薬の量をコントロールする(どんな専門医であっても、すべての患者にちょうどいい薬の種類や量を一発で出すのは難しい)例えば、易怒や暴力・暴言が強く、介護が困難な時、穏やかになる薬を処方され、症状は治まってきたが、徐々に薬が効き過ぎ、転倒の危険や誤嚥、ADLの低下などの症状が起きた時に、医師の処方通り服薬を継続するのではなく、あらかじめ医師からの指示で、元気がなくなってきたら、昼の薬をやめる、1回2錠のところを1錠にするなどの工夫を介護者がおこなうことで、薬の副作用を最小限にすることができるのです。医師は診察時の数分程度しか接することができないが、介護者は常に状態を把握できる立場にいるからこそ、この家庭天秤法が必要なのです。しかし、医師によっては薬の量の変更は認めないと言われることもあります。実践医はこの家庭天秤法を推奨し、また家族に指導していますので、安心して介護を続けることができるのです。

介護者保護主義

 この考え方の特徴は、中核症状(記憶障害、見当識障害、)物忘れなどの治療を優先し、その副作用や周辺・心理症状から、介護負担が増え、介護者が疲弊していくことのないように、「患者と介護者のどちらかしか救えない時は、介護者を救う」(記憶力を高めることより、おだやかにさせる薬を優先させる)という処方哲学なのです。実際に介護をしている家族が倒れてしまえば、「認知症があっても、住み慣れた自宅でいつまでも暮らしたい」という思いは叶わないのです。
 認知症医療の難しさは、患者の後ろにも目を向けるということです。

サプリメントの活用

 認知症医療には多くの解明されていない課題があります。保険適用の治療で治すことができない病気も多くあるのです。しかし混合診療が認められていない日本では、サプリメントなどの使用に否定的な考えもあり、普及にはまだ時間がかかると言われています。サプリメントを勧める医師は怪しいなどの声もありますが、日本医師会の「医師の職業倫理指針」には、
 「医師は科学者でなければならない。しかし、医療の進歩は未知の領域に挑戦するなかで得られるものであり、先端的・実験的医療と詐欺的な医療との区別は往々にして難しい。また臨床では、現在の科学の枠組みでは必ずしも説明できないような代替医療などの意義も否定しえない。しかし原則として医師は科学的根拠をもった医療を提供すべきである。医薬品、医療器具以外で、食品や日常生活上の器具など、人々の健康の推進や生活の便宜に役立つ物やサービスを推薦することは、健康に関する専門家たる医師の社会的役割の一つであって、広く認められるべきである」
 コウノメソッドで推奨されている健康食品の「フェルガード」は全国の実践医もその効果を認めており、多くの認知症の方から支持されています。また、認知症予防の観点から、フェルガードを服用している介護家族も増えています。もちろん混合診療の課題として、貧富の差で生じる不利益には問題がありますが、患者や家族が「いかなる手段ででも認知症を改善させたい」と願っている以上は、やはり検討していくべきだと思います。今後、あらゆる代替医療は進んでいくので、医療側も知らないでは済まされなくなるでしょう。
 筆者の経験では、特に前頭側頭型認知症(ピック病)におけるフェルガードの効果には驚いています。60代後半の女性の方で、「落ち着かなくて知り合いに電話を何度も掛けてしまう」、「夫に暴言を言う」、などの症状に困り、医師の勧めでフェルガードを服用し、2回目の受診時には、医師から「何か困ったことはありますか?」の問いに、何もありません。夫も、「最近は調子がいいです」と言われ、3回目の受診予約を取らずに帰宅したというケースも経験しました。もちろんこれは稀な一例かもしれませんが、未知の領域である認知症に対し、一つの引き出しとなるでしょう。

認知症治療研究会

 今年3月に開催された認知症治療研究会では、コウノメソッドを中心に様々な発表が行われました。筆者もケアマネジャーとして「ケアマネジャーが見た認知症医療の問題点」という題目で講演をしてきました。コウノメソッドで認知症患者を支えるにはやはり、「医師とケアマネジャーの連携が必須である」(情報の共有)、「認知症は物忘れだけの症状ではない」(認知症医療の知識)、「ケアマネジャーが相談を受けるころには進行している」(早期発見の必要性)、「不適切な治療で介護困難になっている事例」。これらを解決していく必要があるのです。
 来年には、第2回認知症治療研究会が、パシフィコ横浜で開催されます。医師のみならず、介護従事者、医療関係者の参加枠もあります。介護技術の習得と同時に、認知症医療知識の習得も今後の大きな課題となり、介護従事者には、より高度で質の高いケア、知識が求められるでしょう。

認知症講座第8回_2

 次回は、認知症ケアの基本事項である、中核症状と周辺心理症状、陽性症状と陰性症状に対する薬剤の基本的な考え方、中核薬(アリセプト、レミニール、メマリー、リバスタッチパッチ)の増量規定に関する問題点を紹介します。

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