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「糖尿病足病変」と「フットケア」のおはなし

医療法人社団福祉会 高須病院 看護部 副看護部長
糖尿病看護認定看護師 日本糖尿病療養指導士
兵頭裕美

糖尿病の足病変ってなに?

 糖尿病の合併症のひとつに足病変(足のトラブル)があり、それを原因として足の切断など深刻な問題が起こってきます。
 世界保健機関(WHO)の定義では、糖尿病足病変とは、神経学的以上といろいろな程度の末梢神経障害を伴った下肢の感染、潰瘍形成、そして深部組織の破壊のことをいいます。具体的には、爪の変形、爪や皮膚の白癬(水虫)、爪周囲の炎症、足趾や足の変形、胼胝(たこ)、鶏眼(うおのめ)、皮膚潰瘍、壊疽、熱傷、末梢動脈疾患などさまざまな病態があります。
 糖尿病足病変は、糖尿病合併症である神経障害や血管障害が関連して発症します。足に何らかの障害や外傷(小さな傷でも)を伴ったまま放置すると、潰瘍や壊疽を引き起こし、重症化すると足の切断に至ります。足を切断すると患者さんの生活の質(QOL)は低下してしまいます。また、足の切断に至った糖尿病患者さんの生命予後は、そうでない場合と比べ著しく悪くなるという調査結果もあります。そうならないために、フットケアを行い、足病変を予防することが重要になります。

足病変の原因

 足病変は、ほんの些細なことから始まります。足病変の外的な発症原因は、なんと約7割が「靴擦れ」で、次にやけど(18%)、外傷(7%)、感染症(3%)が続きます。 

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 小さな傷で、自分ではたいしたことはないと思っていても、大事に至ることがあります。靴擦れを放置していてそこから化膿・潰瘍に進み、血管も詰まって、あれよあれよという間に足の切断となってしまった方もみえます。その間わずか2週間足らずでした。また、神経障害で知覚が鈍り、痛み・かゆみ・暑さ・冷たさなどを感じなくなることもあります。電気ストーブの前でうとうとしていたら焦げ臭い匂いがしてきたので目が覚めると、自分の足がストーブにあたって焦げていたという方もみえました。足の感覚が鈍くなると、こんな事態でも熱さや痛みを感じないということが実際にあります。糖尿病患者さんは、知覚が鈍くなるだけでなく、感染しやすく傷が治りにくくなっています。画鋲が足に刺さっても痛みがなく気づかずそのまま放置、お風呂には入っていても足の裏まで見て洗っていなかったようです。一ヶ月後、歩きにくいなと感じて足の裏を見たら大きな潰瘍ができていて、受診。潰瘍を切除したら足先の半分がなくなってしまったという方もみえました。
 また、足潰瘍の内的原因の第一は「無関心と放置」といわれています。糖尿病患者さん自身や医療者が糖尿病と足の関係を知り、足に関心を持ってフットケアを行うことが何よりも重要になります。先に挙げた例も、糖尿病と足病変の関係を理解して普段から気を付けていたり早く対処できていれば切断に至ることはなかったでしょう。適切なフットケアを行うことで、足の切断の比率を49〜85%削減することができるというデータもあります。まずは、自分の足に関心を持ち、しっかり観察することから始めましょう。

自分でできるフットケア

 患者さん自身が日常生活において外傷や感染症から足を守るために、予防やお手入れをすることがとても重要になります。
 日頃の管理でまず必要なことは、危険なサインを見逃さないよう、足の観察を毎日行うことです(図2)。
 お風呂に入ったとき、靴下を脱いだときに足を見る習慣をつけ、「足の指・指のあいだ・足の裏・足背・かかと・ひざ下全体」というように、見る順番を決めておくと見落としがなくなりよいでしょう。

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 足を清潔に保つことは重要です。ただ、きれいに洗おうとして硬いたわしやナイロンタオルでごしごしと擦るのは傷をつくる可能性があるので注意が必要です。洗ったあとは、とくに指のあいだの水分を十分に拭き取っておくことが大切です。この時期は乾燥が強くなるので、とくに保湿ケアもしっかり行う必要があります。保湿クリームは市販のもので十分効果があります。ポイントは毎日続けることです。なかなか乾燥がよくならない場合は、白癬(水虫)を合併している可能性があるので、皮膚科受診をおすすめします。
 発赤、腫脹、熱感、疼痛、浸出液などが見られる場合は感染兆候といって、何らかの菌に感染している可能性があります。このような場合はすみやかに病院に受診してください。

靴・靴下の選び方

 足病変の予防には、靴・靴下選びは重要です。足長・足囲だけでなく、爪先の形状や高さなどに合わせて選びます。指先および爪が靴先に当たらず、足の幅や足背が圧迫されず、測定が土踏まずに合うもので、できれば足の大きさに合わせて調節できるマジックテープか紐靴がよいでしょう(図3)。「大きい靴が良い」と思っている人もいますが、大きい靴は中で足が動くので、胼胝(たこ)・鶏眼(うおのめ)・靴擦れの原因になります。動かないようにするために、その都度マジックテープや紐を閉め直すことが必要です。
 靴下による圧迫は、血流障害を引き起こし皮膚の損傷につながるため、ゴムがきつくなく内側に縫い目のないものがよいです。素材は、吸湿性の良い綿か通気性の良い絹がおすすめです。傷の早期発見のために、白色もしくは淡色のものを選びましょう。5本指の靴下は、指のあいだの吸湿性に優れていますが、肥満の人では圧迫を引き起こし皮膚損傷につながる可能性があります。履く場合には、靴下のサイズ・指の長さが合っているか、靴下による圧迫がないかなどをしっかり確認しましょう。

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肥厚した爪のケア

 爪の肥厚の原因には、長期間にわたって爪に何らかの物理的な圧迫が加わることが挙げられます。物理的圧迫は足の形に合わない靴によることが多いです。とくに先端が細くなったハイヒールは足の指先に体重がかかりやすく、足先に持続的に圧迫が加わるため注意が必要です。
 爪の肥厚は爪の下や周囲の皮膚への圧迫やひっかかりの原因になり、痛みを伴い歩行困難となることもあります。爪白癬(爪水虫)によって厚くなっている場合は、爪を削るだけでなく白癬の治療を行うことが必要になります。皮膚科を受診して適切な治療を受けてください。爪が分厚くて自分でうまく切れない場合には、爪切りで無理に切ろうとしないで爪ヤスリなどを用いて定期的に削るといいです。この場合、一度に削りすぎないことがポイントです。肥厚が強い場合には、看護師が爪切り用ニッパーを使用して爪切りをしたり電動ヤスリで削り、患者さん自身が自宅でケアできるようにします。フットケア外来をおこなっている医療機関に相談するとよいでしょう。当院でも予約制で対応しています。
 
 糖尿病足病変は、自分自身で少し気をつけて行動することで予防が可能です。今回のお話を参考にして、予防と早期発見・早期対処によりご自身の足を守ってください。

参考文献
①糖尿病足病変に関する国際ワーキンググループ編・内村功ほか監訳:「インターナショナル・コンセンサス糖尿病足病変」:医歯薬出版:2000
②日本糖尿病教育・看護学会編:「糖尿病看護フットケア技術」:日本看護協会出版会:2013

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