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PET健診で見つかった肺がん

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肺がん検査

肺がんは、日本人のがん死亡者数の第一位のがんです。肺がんになる方は、男性では二番目に多く、女性では四番目に多いがんですが、がん死亡者数では男性で第一位、女性でも第二位です。つまり肺がんになると死亡する確率が高いといえます。ただし肺がん検診は、他のがんに比べて検診を行う整備が進んでいます。それは過去の肺結核検診から続いている、胸部のX線撮影(図1)が功を奏しているからです。ただし、肺結核の好発部位は肺尖と呼ばれている、肺の上の方です(図1:赤丸部分)。この部位は胸部のX線撮影においても良く見える部分です。ところが、がんは肺結核のような好発部位はなく、どこにでも出来ます。胸部の左右にある黒い部分が肺で、ここにがんが出来た場合は診断しやすいです。ところが心臓、肝臓などに隠れたところ、縦隔(青□)に発生すると、ほとんど見つけることは困難になります。
 そこで胸部検診は胸部CTで行うことが提唱されていますが、高コストになるためなかなか普及しません。また、小さな結節や、すりガラス陰影と呼ばれる早期のがんをCTだけで判断するのは困難なこともあります。

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症例一、PET健診で見つけた早期肺がん

 最初の方は70代の男性です。PET健診を受診され、胸部撮影・超音波検査・MRI・CT・PET検査と行いました。
 胸部X線撮影(図2)では、異常を指摘できる箇所はありません。胸部CTでは、左肺上葉にすりガラス影(図3青→)と、左肺上葉の中間帯にすりガラス影を伴った桿状影(図3赤→)が見られ炎症や早期のがんが疑われます。しかしいきなり気管支鏡などを行うことなく経過観察を行って、病巣が大きくなるかを経過観察するのが一般的です。
 しかしこの方は同時にPET検査を行っていて、全身像(図4赤→)ではわかりにくいですが、CTとPET画像を重ね合わせたFusion画像(図5)では、結節に一致してFDGの集積が見られ、早期のがんと診断しました。この箇所は胸部撮影図2の赤→部分ですが何も指摘できません。CT検査でも細かな病変は指摘できますが、小さな病変では正確な診断は困難です。なお同時に腫瘍マーカーを7種類測定していますがいずれも基準値以内でした。

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症例二、進行がんとして見つかった症例

 次の方は発見時が進行がんであった方です。長年煙草を愛飲していた方で、肺がんに罹患する可能性が高いことを自覚していたので、三ヶ月に一度総合病院で胸部X線検査を行っていた方です。PET健診のことを知って受診しました。しかしこの方の思いは常に肺の検査は行っていたので、がんが見つかるとしたら肺がん以外だろうと思って受診しました。図6の胸部撮影では異常は指摘できませんでした。しかし胸部CTでは左肺の気管分岐部の背面に、中心が空洞になった腫瘍を認めます(図7上段赤→)。PET検査では同部位にFDGの強い集積が見られ(図7下段、図8赤→)、さらにPETでは縦隔リンパ節転移(図8黄→)を指摘できます。
 この方の最も恐れている肺がんが見つかったわけです。胸部撮影では気管分岐部の後(図6赤→)に隠れていて見つけることが出来ませんでした。しかもこの腫瘍は中心部が空洞化していることからそれなりの年月が経過していることがわかります。

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症例三、2年ぶりの検査で進行肺がん

 60代最後の歳にPET健診を受診しました。その時はがんは見つかりませんでした。安心して過ごしていましたが、2年経過して再びPET健診を受診しました。最初に撮影した胸部X線撮影において、右肺の下に異常陰影が認められました(図9赤→)。胸部CTでは右肺上葉に結節影、右肺下葉の末梢胸膜下に、辺縁不整形な腫瘤が出現しています(図10赤→)。CTではこのがんが、どこまで転移しているかはわかりません。しかしPET検査では一目瞭然と判断が出来ます。図10はそのPET画像です。赤矢印が原発の肺がん、黄矢印が転移です。リンパ節転移から、肺内転移まではっきりと診断できます。

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まとめ

 肺の検査として胸部X線撮影は昔から良く行われてきました。胸部は空気で膨らんだ臓器なので他の障害物が少なく見えやすいはずですが、意外と死角が多く今回紹介した2例の症例もそうでした。胸部CTでは細かな病変も見つけることが出来、しかもほとんど死角はありません。しかし症例一のように小さすぎる病変は判断できないことがあります。PET検査ではこのような症例でも集積の有無により判断が可能です。しかもCTでは診断できない、縦隔リンパ節などの転移も正確に診断できます。
 どの部位のがんでも共通していますが、がんの種類によって成長速度は異なります。症例三の方が最も早く、症例二の方が最も遅いように思えます。今回紹介した方々は全員喫煙者で、がんになる確率の高い方々です。このような方々は、有効な検査を定期的に受診していただきたいです。

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