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糖尿病と飲酒

医療法人秀麗会山尾病院 看護・介護部長
糖尿病看護認定看護師 日本糖尿病療養指導士

兵頭 裕美 氏

 

糖尿病とアルコールの関係

 年末年始はいかがお過ごしでしたか?この時期、職場でもご家庭でもお酒を飲む機会が増えるのではないでしょうか?そこで、今回は糖尿病と飲酒について、お伝えします。

健康的に生活できる本来の飲酒量に戻していくきっかけに

 お酒に含まれるアルコールは、アルコールそのものの作用やアルコールの代謝に伴って血糖値に影響を与えます。多量の飲酒は糖尿病発病の危険性を高め、とくに肝臓や膵臓の障害が加わると血糖コントロールが難しい糖尿病になってしまうため、糖尿病患者さんは多量飲酒を控えるべきです。しかし、血糖コントロールが良好で合併症がなく医師より禁酒の指示がない場合は、酒肴(つまみ)や飲酒量に注意した適度の飲酒であればよいと考えられています。

 今まで飲みすぎていた人は「健康的に生活できる本来の飲酒量に戻していくきっかけ」と前向きにとらえられるとよいですね。

 

飲酒は糖尿病の原因になる?

 お酒好きの方がまず気にされる点だと思いますが、結論から言いますと、やはり飲酒は糖尿病の原因になります。それはなぜでしょうか?

 まず、お酒には糖質を含んでいるものと含んでいないものがあります。糖質を含んでいるものは、ビール、日本酒、チューハイ、梅酒、ワイン、紹興酒などです。これらのお酒は飲むと血糖値が上がるので飲みすぎが糖尿病の原因になりうることはお分かりいただけると思います。では糖質を含んでいないお酒(ウイスキー、焼酎、ジン、ウォッカなど)であれば血糖値を上げないので大丈夫かというと、そうではないのです。

 

膵臓の細胞が破壊され、血糖値が下がりにくくなり糖尿病発症に

 アルコールは、アルコールそのものの作用やその代謝の過程でも血糖値に影響を与えます。さらに、多量飲酒でアルコール性膵炎を繰り返すと、血糖値を下げるホルモン(インスリン)を分泌する膵臓の細胞が破壊され、血糖値が下がりにくくなり糖尿病発症につながります。また、アルコール性肝硬変では肝臓で分解されるはずのインスリンが血液中に過剰に残ってしまい、効きが悪くなることで血糖値が下がりにくくなり、糖尿病をひきおこします。

 

適量以上の飲酒を続け糖尿病が進行するとどうなる?

過剰な飲酒を続けると、合併症発症のリスクが高く

 糖尿病が発症しているにもかかわらず適量以上の飲酒を続けると、どうなるのでしょうか?。糖尿病は血糖コントロールを良好に保てば、普通の方と同じ生活ができ、食べてはいけないものもなく、お酒も楽しむことができます。しかし、自覚症状がないからといって血糖値が高いにもかかわらず過剰な飲酒を続けると、合併症発症のリスクが高くなります。

 

アルコールの神経毒と相まって、糖尿病性末梢神経障害が早期から悪化

 糖尿病の三大合併症は「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」「糖尿病性神経障害」であることは以前にもお伝えしたとおりです。とくに多量飲酒をされる方は、アルコールの神経毒と相まって、糖尿病性末梢神経障害が早期から悪化してしまいます。自覚症状がないからといって楽観視せず、血糖コントロールを良好に保つこととお酒の適量を守ることが、糖尿病患者さんがお酒を楽しむ大前提となります。

 

お酒を楽しむために守ること

 糖尿病患者さんがお酒を楽しむための前提条件が以下になります。

体重と血糖値が安定するまではアルコールは控えましょう

 まず、肥満がある方は適正体重にすることで血糖値も改善されることが多いので、体重と血糖値が安定するまではアルコールは控えましょう。また、条件を満たしているからといって安心して飲みすぎてしまうと、血糖値が不安定になり合併症のリスクも高くなってしまいます。

 では、適量とはどれくらいでしょうか?上記の条件を満たしている方で、適量とされるアルコール量の目安は、男性で純エタノール換算1日20g以下・女性でその半量以下です。エタノール換算で20g程度のお酒の具体的な分量の目安は、ビールなら中瓶1本(500ml)、日本酒1合(180ml)、ワイン2杯程度(200ml)、ウィスキーダブル1杯(60ml)、焼酎1杯(70ml)となり、そのカロリーは140~200kcalとなります。

 

アルコールの種類と糖質・カロリー

 焼酎やウィスキーは糖質を含みませんが、カロリーゼロというわけではありません。最近では「糖質ゼロ」や「糖質オフ」を謳った商品が多く出回っていますが、これらの商品にもカロリーはあります。できるだけカロリーが低いものを選ぶことが適正体重の維持につながりますので、お酒を購入する際にはエネルギー表示も確認しましょう。代表的なお酒とそのカロリー、糖質量は表を参考にしてください。

 

 

飲酒する際に気をつけるべきポイント

 条件を満たして適量内での飲酒が認められた場合に気をつけるべきポイントをまとめてみます。

①すきっ腹の状態で飲まない

 すきっ腹で飲むのはよくないと聞かれたことがあると思います。とくにインスリン注射や経口血糖降下薬などの薬物治療中の方は、空腹の状態でのアルコール摂取で低血糖をきたしてしまうおそれがあります。食事をしないで飲み始めるのは厳禁です。

 

②揚げ物はできるだけ避ける

 から揚げや軟骨揚げ。おつまみの定番でおいしいのですが、アルコールを適量内に抑えても、揚げ物を食べすぎてしまうとカロリーオーバーになってしまいます。飲み会などでは、「揚げ物は2口まで」などマイルールを作っておくといいかもしれません。

 

③隠れ炭水化物に注意する

 居酒屋メニューにもあるたこ焼き、チヂミ、お好み焼き、ギョウザやシュウマイの皮などは、ほとんど炭水化物です。意識しないで食べ過ぎてしまうと、炭水化物の摂取量が多くなり血糖値が上がってしまいます。フライドポテトや山芋料理などのイモ類も糖質が多くカロリーが高いので食べ過ぎないようにしましょう。

 

④調味料からのエネルギー摂取も気をつける

 イカ焼きや野菜サラダなどカロリーが少ないメニューを選んでも、添えられているマヨネーズをつけてしまうと一気にカロリーが上がってしまいます。マヨネーズは大さじ1杯で80kcalです。また、ドレッシングはフレンチドレッシングやシーザードレッシングなどクリーミーなものは高カロリーになります。選べるときは、和風やノンオイルのドレッシングを選び、かけすぎないようにしてください。ささいなことでもチリも積もれば…ですね。余分なカロリー摂取を避けるために少し注意をはらいましょう。

 

⑤ソフトドリンクや水を飲みながらがおすすめです

 お茶などの無糖のソフトドリンクや水を飲むことによって、飲みすぎ・食べ過ぎを防ぐ効果が期待できます。ジュースは急激な血糖上昇を招くので避けましょう。

 

 

⑥おつまみ選びのコツ

 おつまみには野菜系のさっぱりしたものや高たんぱく低カロリーのものを選びましょう。食べる順番は、先に食物繊維が豊富な野菜を摂取すると消化吸収が穏やかになり、急激な血糖上昇を抑えられます。タンパク質は肝臓の働きを助けて、アルコールの解毒やカロリーの代謝をスムーズにします。お勧めのおつまみメニューは、図を参考にしてください。

 

糖尿病もお酒も上手に付き合うことが大切!

 糖尿病は血糖値を上手にコントロールすれば、普通の人と同じ生活ができる病気です。高い血糖値を放置すると合併症発症リスクが高くなるので、血糖値とうまく付き合っていくことが大切です。飲み会があった日は少し遠回りして帰りに歩く時間を増やす、翌日の食事を控えめにするなど、前後でも血糖コントロールを意識すると無理がなくなると思います。血糖値を上手にコントロールして、お酒もお食事も楽しんでいきましょう。

参考:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

 

 

 

糖尿病についてしっかり理解したい患者さん向けのお勧め本

「糖尿病治療の手びき 2017 (改訂第57版)」出版社:南江堂

 

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