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糖尿病患者さん 1千万人にのぼる!

医療法人秀麗会山尾病院 看護・介護部長
糖尿病看護認定看護師 日本糖尿病療養指導士

兵頭 裕美 氏

 

 

糖尿病患者の推計

 糖尿病が強く疑われる患者が2016年に推計1千万人に上ることが、厚生労働省の2016年国民健康・栄養調査(2017年9月21日発表)でわかりました。高齢化が進んだことなどから、前回患者数を推計した2012年の調査から50万人増え、初めて1千万人台になりました。

 この調査は厚生労働省が健康増進法に基づいて毎年実施しているものです。項目は身体的データや食事、飲酒、喫煙、睡眠、運動など幅広く、糖尿病患者数の推計は4~5年おきに調査しています。2016年は約2万4千世帯を対象に実施されました。糖尿病はこのうち20歳以上の約1万1千人について、過去1~2か月の血糖状態を示すヘモグロビンA1c(エーワンシー)を測定し、糖尿病が強く疑われる人や検査値が正常と異常の間にあり、「糖尿病の可能性を否定できない」予備軍を全国にあてはめて推計しています。

 

 

糖尿病患者は増加の一途

 糖尿病患者は、推計を始めた1997年の690万人から右肩上がりで推移しています(図1)。運動不足や食生活の乱れなどで肥満がふえていることも大きな要因です。患者は全体の12.1%、男性は50歳代で12.6%、60歳代で21.8%、70歳代で23.2%となっています。女性は50歳代で6.1%、60歳代で12.0%、70歳代で16.8%です。高齢になるとインスリンの分泌も少なくなることから、予備軍の状態が悪化し有病者が増えます。有病率の高い高齢者人口の増加とともに、糖尿病患者も増加しています。

図1:「糖尿病が強く疑われる者」、「糖尿病の可能性を否定できない者」の推計人数の年次推移

(20 歳以上、男女計)(平成9年、14 年、19 年、24 年、28 年)

 

予備軍や未受診率は減少

 一方、糖尿病予備軍は2007年の1320万人をピークに減少し、2016年は2012年よりも100万人少ない1千万人と推計されました。厚生労働省は2008年から始まった特定健康診査(メタボ健診)などによる効果が出ているとみています。

 「糖尿病が強く疑われる者」のうち、現在治療を受けている者の割合は76.6%です。男女別にみると男性で78.7%、女性で74.1%であり、男女とも有意に増加しています。性・年齢階級別にみると、40 歳代男性では治療を受けている割合が他の年代よりも低い結果となっています(図2)。このようなデータを見ると、働き盛りで多忙な年代では、症状がない糖尿病は放置されがちである傾向があることを示しています。未治療率は、少しずつ改善されつつあるもの(図3)、まだまだ対策が十分とは言えない状況であると感じます。以前からこの紙面で何度もお伝えしていますが、糖尿病は放置すると、網膜症や腎症などの合併症のほか、脳梗塞や心筋梗塞などの原因にもなります。そうならないように、症状がないうちから健診などで詳しい検査や受診を勧められた際には、結果を軽視せず医師に相談してください。

図2:「糖尿病が強く疑われる者」における治療の状況(40 歳以上、性・年齢階級別、全国補正値)

 

図3:「糖尿病が強く疑われる者」における治療の状況の年次推移(20 歳以上、総数・男女別)

(平成9年、14 年、19 年、24 年、28 年)

 

若い世代ほど栄養バランスに課題

 これまでも普段から栄養バランスの良い食事を心がけることや体をうごかすことの大切さをお伝えしてきました。これに関する気になるデータもピックアップしてご紹介しましょう。

野菜摂取量目標値350g、20歳代で摂取できている人は20%以下

 まず、食事についてです。主食・主菜・副菜を組み合わせた食事は、若い世代ほど食べられていない傾向にあり、この世代は、外食や中食の利用割合が高いという結果になっています。「健康日本21(第二次)」の1日の野菜摂取量目標値である350g摂取できている人は、20歳代では20%以下となっています(図4)。野菜が不足すると、ビタミンA、ビタミンC、食物繊維などが不足します。この不足状態が慢性化すると、イライラしたり、うつ状態になるなど精神面にも悪影響を及ぼします。また、血流も悪くなるので血液がドロドロになり、肌荒れや便秘、肩こりや高血圧、動脈硬化にもなりかねません。その他、痛風や糖尿病のリスクも高くなります。単に野菜不足と言って軽く見ていると、身体の中の様々な栄養分が不足し、不調を引き起こし、最終的にはいろいろな病気を引き起こしてしまいます。

図4:野菜摂取量の平均値(20 歳以上、性・年齢階級別、全国補正値)

運動不足による弊害は、肥満だけでなく心肺機能の衰えやうつ病にも

 次に運動についてのデータを見てみましょう。運動習慣のある者の割合は男性で35.1%、女性で27.4%であり、この10 年間でみると男性では有意な増減はなく、女性では減少傾向が見られます(図5)。年齢階級別にみると、その割合は男女ともに30 歳代で最も低く、それぞれ18.4%、9.8%です(図6)。ここでいう「運動習慣のある者」は、「1回30 分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している」という条件があります。運動不足による弊害は、太ることだけではありません。心肺機能が衰える、筋肉が衰えて体が硬くなる、骨が弱くなる、ストレスを感じやすく免疫機能が落ちる、うつ病などの心の病気になるなど、さまざまです。なかなかまとまった運動時間を生活の中で確保することが難しい方は、エレベーターやエスカレーターでなく階段を使う、少しの距離なら歩いてみる、買い物の際には遠くの駐車場に駐車するなど、ちょっとの工夫でできることから体を動かすことに慣れていきましょう。

 

図5:年齢調整した、運動習慣のある者の割合の年次推移(20 歳以上)(平成18~28年)

 

図6:運動習慣のある者の割合(20 歳以上、性・年齢階級別、全国補正値)

 

 今回は、発表されたばかりの厚生労働省の2016年国民健康・栄養調査から、糖尿病に関連する興味深いデータとそこから読み取れることについて説明しました。このほかにも、睡眠に関すること、喫煙に関すること、歯の健康に関することなど、健康に関する現在の日本状況を知ることができるデータが発表されています。興味がある方は、厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf)をご覧ください。

 

 

 

糖尿病についてしっかり理解したい患者さん向けのお勧め本

「糖尿病治療の手びき 2017 (改訂第57版)」出版社:南江堂

 

 

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