ワライフ認知症講座 第23回 認知症治療薬を理解する


認知症治療薬とは

 認知症の患者さんが服用する代表的な薬に、アリセプト(一般名:ドネペジル)があります。認知症の中核症状「認知機能の低下」を食い止めるための薬です。アルツハイマー型認知症の患者さんの半数は、アリセプトを服用すると調子が良くなると言われています。元気が出て、頭がはっきりして、記憶力なども向上することがあります。その効果は一時的で、病気自体の進行を止めることもできません。

 しかし、数年程度は進行を遅らせ、患者さんは元気に暮らすことができるので、アリセプトはとても良い薬なのです。現在はアリセプトを含め4種類の認知症治療薬が発売されています。

 

実例でみる認知症治療薬1

レビー小体型認知症の男性―当初アリセプトを服薬

 70代男性、(診断:レビー小体型認知症)主症状として物忘れ、不眠、歩行障害がある。病識はあり、本人も悩んでいた。一人暮らしに支障が出てきたため、施設に入所する事になった。

 入所時には認知症治療薬:アリセプト10㎎を服薬していた。状態としては興奮傾向、イライラ感、焦燥感がある。身の回りのことに関しては概ね自分で行うことができていたが、興奮などの症状があったため主治医へ相談した結果、アリセプトを10㎎から5㎎へ減量して経過観察することになった。

 1週間程度で興奮やイライラ感は改善してきたが、若干ではあるが歩行状態が悪化したため、再度主治医へ相談を行った。再受診の結果、アリセプトからリバスタッチパッチへ変更することになった。
※(コウノメソッドではレビー小体型認知症の第一選択がリバスタッチパッチとなっている。歩行の改善がみられると言われています。)

リバスタッチパッチに変更で症状に変化

 アリセプト、リバスタッチパッチ、ともに認知症治療薬だが、ここで大きな違いを確認することができた。

 リバスタッチパッチへ変更後1週間程度で様々な周辺心理症状が出現してきたのです。

①排泄・アリセプトを服用していた時には排泄の失敗はなかったが、リバスタッチパッチへ変更した後にはトイレの場所が分からなくなり、自室や廊下で排泄してしまう状況になった。

②夜間せん妄・不眠が続き、深夜に衣類を脱ぎ廊下を歩き回る、意思の疎通が困難で、目線も合わない。
※(コウノメソッドでは、リバスタッチパッチは意識障害の改善が期待できると言われています。)

③食事・食事時に箸やスプーンの使い方が分からず、介助が必要な状態になってしまった

個人差が大きい認知症治療薬

 このように薬剤を変更してから様々な症状が出現してきたことから、同じ認知症治療薬でも個人差が大きく、コウノメソッドでレビー小体型認知症にはリバスタッチパッチが第一選択とされているが今回のケースでは合わなかったことが分かりました。

 その後、アリセプトに戻すように医師から指示が出て、数日後には元通りに改善しました。現在では5㎎を分けて朝2.5㎎・夕2.5㎎という処方となっています。

 やはり認知症治療薬は個人差が非常に大きく、画一的に処方されてしまうと介護者が大変な苦労をすることになるので十分に注意する必要があります。

 

実例でみる認知症治療薬2

うつ病と診断された女性―当初抗うつ薬を処方

 80代女性、(診断名:うつ病)主症状としては、外出したくない、やる気が起こらない、家事をしたくない、などうつ病のような症状があった。主治医からは抗うつ薬が処方されていたが改善することはなく、一日中引きこもる生活を送っていた。

 

 

セカンドオピニオンで軽度認知機能障害と診断

 専門医へセカンドオピニオンを伺うことになり受診をした結果、軽度認知機能障害(MCI)と診断され治療を開始した。現在服薬している抗うつ薬は医師の指示のもと減薬し、認知症治療薬・レミニールが開始された。
※(「うつ病」と「うつ状態」の違いには注意が必要。認知症の症状の一つに「うつ状態」があり、抗うつ薬を服用しても改善しないと言われています。うつ病の患者さんが抗うつ薬を服用すれば改善がみられるのでその違いには細心の注意が必要です。)

服薬量で症状が変化

 はじめは認知症治療薬レミニール4㎎を朝2㎎・夕2㎎で経過を観察することになった。数日後には笑顔が見られ、本人も「頭がスッキリした」と喜んでいた。その後用量を増やし、8㎎、朝4㎎・夕4㎎となった。治療開始前は身の回りのことや夫の世話もできる状況ではなかったが、家事や夫の世話も積極的に行うようになっていた。

 しかし、レミニールを8㎎へ増量した頃から夫の不満が多くなり、生活状況を確認してみると、今までは認知症のうつ状態からやる気が起こらず、夫に対しても発言は少なかったが、8㎎に増量してからは夫の行動のすべてに指示を出し、時には声を荒げて怒鳴ることもあった。引きこもっている間は身なりに気を遣わず、一日中パジャマ姿でいたが、化粧をし、髪を整えるまでに改善していた。

 今回の治療でのメリットは生活意欲の向上やうつ状態の改善がみられ、本人はとても満足しています。デメリットは少し興奮傾向があり、生活を共にしている夫が疲れてしまうことでした。

 主治医に相談をして4㎎、朝2㎎・夕2㎎に変更して頂き、現在では穏やかに夫と暮らしています。

 

認知症治療の二つの側面

 認知症治療は二つの側面があると考えるべきです。一つは本人の辛さや苦しみを改善させ、より質の良い生活ができるようになる。もう一つは、第二の患者と言われている介護家族の生活や負担のバランスを考えることです。

 

 

認知症治療薬が合っているか、用量はどうかなど見極めが重要

 家族介護は互いに支えあうことで在宅生活を維持することができるので、認知症治療によって家族の負担が増えてしまうことは避けなければなりません。

 認知症治療薬が合っているかをしっかり見極めることが重要です。また、認知症治療薬は増量時に変化が出やすいと言われているので家族や介護従事者はよく観察することが大切です。

 

 

一般社団法人 認知症ケアアドバイザー協会 代表理事
介護支援専門員・介護福祉士
認知症治療研究会 会員
抗認知症薬の適量処方を実現する会 会員

小板 建太 氏

 

 

一般社団法人認知症ケアアドバイザー協会

詳細お問い合わせ 0120-447-822
Email miyabi-house@katch.ne.jp

認知症介護メール相談を無料で受け付けていますので、お気軽にお問合せ下さい。

 

 

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