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社会福祉法人 聖隷福祉事業団 保健事業部 健康コラム第5回 糖尿病について

①糖尿病とは、どのような病気でしょうか?

 「のどの渇き、水分の多飲、多尿、尿糖」といった所見を示す疾患として、人類は古くから糖尿病を認識していたことが知られています。古代エジプト・ギリシャ時代には、すでに糖尿病患者についての詳細な記録が残されています。日本においても、美食を楽しんでいた平安時代の貴族に糖尿病が多数みられていたと考えられています。

 その後、医学の進歩により、糖尿病の本質は「血液中の糖の濃度(すなわち血糖値)」の上昇であることが明らかになりました。血糖は、膵臓(すいぞう)から分泌される「インスリン」というホルモンにより調節を受けています。インスリンの分泌量、またはインスリンの効きやすさが不十分である場合、血糖値が上昇しやすくなります。空腹時血糖値126 mg/dl、随時血糖値200 mg/dl、またはHbA1c値(ヘモグロビンエーワンシー:最近1?2ヶ月の血糖値の平均の指標)6.5%を超えると糖尿病型と判定されます。

 糖尿病には、免疫学的な理由により膵臓の機能が損なわれ、インスリンの分泌量が低下する1型糖尿病と、遺伝的体質や生活習慣の影響により発症する2型糖尿病があります。健診で糖尿病と診断される方の大部分は、2型糖尿病に分類されます。しかしながら、若年発症や痩せ型の場合などでは、潜在的な1型糖尿病の素因が認められることや、糖尿病の原因となる他の疾患が背景に存在すること(二次性糖尿病)があります。

 

②なぜ糖尿病の治療が必要なのでしょうか?

 「のどの渇き、水分の多飲、多尿」といった古典的な糖尿病症状は、ある程度の高血糖に至った段階で出現します。また、さらに血糖が上昇すると、昏睡などをともなう重篤な急性代謝失調により、生命にかかわることもあります。しかし、健診で指摘される高血糖は、多くの場合そこまで高度ではありません。血糖が高いと言われたところで、「特に困った症状もないのに、なぜ治療しなければいけないのだろう?」と思う人もいるかもしれません。

 糖尿病の治療が必要な理由―それは、たとえ軽度であったとしても血糖が高い状態が長期間続くことにより、全身の血管へのダメージが蓄積し、様々な臓器において「合併症」が出現する、という点にあります。

 

 

 

③糖尿病の合併症とは?

 では、糖尿病の合併症とはどのようなものがあるのでしょうか。特に重要な臓器の合併症として知られているのは次のとおりです。

 いずれも生命そのものや生活の質に大きく関わる疾患です。これらの糖尿病合併症を防ぐためには、高血糖による全身の血管へのダメージを減らす必要があり、そのためには、血糖値をできるだけ適正な範囲に保つことが重要となります。

 

④糖尿病の治療

 糖尿病の大部分を占める2型糖尿病の治療において、まず重要となるのは食事療法や運動療法といった、生活習慣の改善です。特に肥満をともなう場合は、減量するだけで著明に血糖コントロールが改善することがあります。

 食事療法や運動療法のみでは血糖値の改善が得られない場合、薬物治療を検討することになります。

 

 

 数十年前に比べると、糖尿病の薬物治療は劇的に進歩しました。現在では、個々人の病態に合った適切な薬剤を選択することによって、良好な血糖コントロールを得ることが十分に期待できます。そして、長期間にわたって血糖値を良好に保つことによって、糖尿病合併症の進展を抑制し、ひいては糖尿病ではない人と同程度の健康寿命を達成することも可能となります。

 

 

自分に合った主治医を見つけて、二人三脚で治療を

 糖尿病と診断された方は、落ち込んで不安になることがあるかもしれませんが、前向きな気持ちを持っていただければと思います。自分に合った主治医の先生を見つけて、二人三脚で治療に取り組んでいってください。

 

 

 

佐藤内科医院 院長
(浜松市中区 糖尿病内分泌専門クリニック 2018年夏開院予定)
浜松医科大学非常勤講師
前聖隷健康診断センター医長

佐藤 亮介 氏

 

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