WEBワライフ

三河・遠州地域の介護施設検索・介護情報総合サイト「ワライフ」

【連載もの】介護制度について考える 第11回

通院、服薬もたいへん  愛知大学 地域政務学部 教授 西村正広氏

 

 

 

困難な通院と服薬

父は自分で運転して病院に通い、もらったクスリもきちんと飲んでいるだろう。私はそう思っていました。ところが、あるとき戸棚から大量に飲み残しのクスリが見つかりました。几帳面な性格の父でしたから、通院や服薬は自分できちんと出来ていました。でも、それがだんだん出来なくなっていたようです。父の通っていた循環器科のK病院や泌尿器科クリニックに問い合わせると、父のことが気になっていたと言われました。K病院では、父が予約の日に来なかったり、受付をしたのに診察を受けずに帰ってしまったことが何度もあったそうです。また、クリニックでは父がしょっちゅう保険証を忘れたり、処方せんを出しても薬局に寄らずに帰ったりすることがあったとのことでした。父は父なりに予約日を間違えないようカレンダーに丸印を付けたりして病院へ行くよう努力していました。しかし予約の日時に病院へ行き、待合室で順番を待って診察を受け、会計でお金を払って処方せんをもらい、調剤薬局でまた順番を待ってクスリをもらってお金を払って・・・、と、健常な人には何でもない通院ですが、物忘れが激しくなってきた父にはもう限界だったようです。

 

母との同伴通院、 そして訪問看護

三年前に心臓の手術をした父にとって外来通院や服薬は欠かせません。どうしたら良いのだろう。私が両親の近くに住んでいれば、月に2ヶ所の通院くらいは一緒に行けるけれど、名古屋と札幌ですからそうはいきません。そこで苦肉の策として、母と父を同じ病院に通わせることを思いつきました。母には身体の不自由はありましたが認知症はなく、R病院の内科とリハビリに通っていました。父もR病院にお願いして、母と通院日を一緒にして夫婦同伴で通えば良い。そうすれば父が保険証を忘れたりクスリをもらわず帰ったりすることもなくなります。早速、父と母の主治医に事情を話して、二人そろってR病院に通えるようにしました。月に一度の泌尿器科クリニック受診には札幌市内に住む私の弟が付き添うことにしました。
それと合わせて、父が病院でもらったクスリをきちんと飲むために訪問看護を活用しました。訪問看護は介護保険のサービスのひとつで、看護師が定期的にやってきて体調管理や健康チェックなどを手伝ってくれるものです。父の場合、看護師の訪問を週一回お願いし、病院でもらったクスリを「お薬カレンダー」に入れてもらい、それがちゃんと飲まれているかも点検してもらうことにしました。

 

クスリを飲むのもひと仕事

病院へ行くと、お医者さんは「じゃあ、クスリを出しておきますね」と言って処方せんを出し、患者は調剤薬局でクスリを受け取って家に帰り、説明書どおりに飲みます。それが当たり前なのですが、認知症や物忘れのある高齢者にはその当たり前が出来ないこともあります。高齢者にはクスリの種類も多く、朝・昼・夕のクスリの種類や量もまた違います。出されたクスリを間違えずに飲むのもひと仕事です。外用薬や頓服薬が加わったりするとさらに難度はアップします。飲み忘れや服薬間違えもあるでしょう。認知症があると服薬は本当に困難です。「じゃあ、クスリを」と言って出したクスリが家に帰って処方どおりに飲まれているか。出した側はその都度それを確認するすべがありません。父のように戸棚にしまい込まれたらおジャンです。介護保険サービスでは、自宅で暮らす要介護者の服薬をホームヘルパーや訪問看護師あるいは薬剤師によって見守ったり管理指導したりすることも期待されていますが、三度三度の服薬を毎回付き添ってチェックすることは無理です。

父の場合は、週に一度看護師さんが訪問して、病院でもらったクスリを朝昼晩間違えずに飲めるよう「お薬カレンダー」にセットしてくれます。そして次の週には「お薬カレンダー」にセットしたクスリがちゃんと飲まれていたかチェックしてくれます。週に二度来るホームヘルパーさんも「お薬カレンダー」のクスリの減り具合を気にかけ、異常があれば訪問看護師さんに連絡してくれる体制にしました。これで通院と服薬の問題は何とかクリアできました。

 

———–—————————————————
西村正広氏略歴:日本福祉大学大学院修了
社会保険中京病院
ソーシャルワーカーなどを経て現職
専門:社会保障

 

 

前の記事 介護・健康コラム 次の記事