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【医療】甲状腺がんのPET診断(平成25年夏号掲載)

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甲状腺がんのPET診断

■甲状腺がんの発生と統計
甲状腺がんは罹患率の高いがんではありませんが、無視できるがんではありません。罹患割合は人口10万人に対して男性では4.9人、女性では13.2人と 女性の方が多いです(国立がんセンターの統計より)。甲状腺がんの罹患数は女性は1990年以降は横ばいですが、男性は微増しています。

■甲状腺がんの種類と性質
甲状腺がんの種類は、乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、未分化がん、髄様(ずいよう)がんに分類されます。
乳頭がんは甲状腺がんの約80%を占め、その性質は悪性度が低く、成長も遅いです。そのため小さな乳頭がんが倍の大きさになるのに、数年を要します。また 予後も比較的良好です。濾胞がんは10〜15%程の割合で、比較的高齢者に多く乳頭がんと比べて予後は悪いが、進行速度は同じように遅いがんです。未分化 がんは3〜5%の発生頻度ですが、悪性度が大変高く発見されてからの生存年数が1年未満です。髄様がんは1〜2%の発生頻度で、悪性度も高くはありませ ん。

■甲状腺がんの自覚症状
甲状腺は喉の前にある臓器で、蝶が羽を広げたような形をしています。
甲状腺は甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺は薄い臓器であるために、手で触れてもわかりにくく、がんができてもなかなか気づきません。甲状腺は身体の表 面にある臓器で、しかも毎日鏡で見ることのできる部位であるにもかかわらず、発見されることが遅いがんで、喉にしこりを触知したり、嗄声や喉の痛み、嚥下 障害によって見つかることがあります。
このような自覚症状があるときは、後でも述べますがそれなりにがんが成長していたり、近傍のリンパ節に転移している場合が多いです。

 

■甲状腺がんの検査
甲状腺がんの検査は触診、超音波検査が主となり、がんの広がり診断としてCT、MRI検査などが行われます。いずれにしても早期発見のための検診として行われることは少なく、自己診断に頼っているのが現状です。

■PET健診で見つかった甲状腺がん
症例1 自覚症状のない5ミリメートル以下の甲状腺がん
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PETは形を見つける検査ではありません。機能を画像化する検査です。このため、そこにがん細胞があれば、他の臓器の中に隠れていても見つけることができます。
図1の方は当センターでPET健診をお受けになった、60代女性の方です。特に健康にご不安のない方で、実際、ほかの検査では全く問題がありませんでし た。しかしPET検査(図1)にて矢印で示した箇所に小さな集積を認めました。CTや超音波検査で確認しましたが、見つけることはできませんでした。
しかし図2に示すようにPET画像とCT画像を重ねることにより、位置的に甲状腺がんと診断し、手術した結果5mmに満たない甲状腺がんでした。

 

 

症例2 1年間病院で検査しても見つけられなかった甲状腺がん
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声のしわがれに気づき総合病院の耳鼻咽喉科を受診したものの原因がわからず、色々な病院、それぞれの科(内科、耳鼻科、外科、呼吸器科、循環器科)を受 診。各種検査(CT、MRI、内視鏡、血液検査など)を受けられましたが原因がわからずじまい。最後には心の病として神経内科の受診を勧められた方です。 ご本人にとって声のしわがれは事実で、不安は消えず、当院のPET健診のことを知り受診されました。
PET検査の結果(図3)、甲状腺左葉下極端(→)にFDGの高集積を認め、かつ左下深頸リンパ節(→)にも集積を認めました。声のしわがれは、がんによる左反回神経麻痺によるものでした。図4の上段のCT画像でもわかるとおり、腫大したリンパ節転移(→) は単純CTでも診断できますが、この方は50代の男性で、甲状腺がんは男性に少ないとの判断と、声のしわがれにとらわれるあまり喉の部分や、肺疾患などの 検査を行い、甲状腺がんは除外され的確な検査ができていませんでした。症状を自覚してからPET検査によって甲状腺がんを見つけるまでに1年を要してしま い、体表面に近い臓器でありながら発見の遅れた例となりました。

 

症例3 異所性甲状腺がん
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甲状腺は胎児の時代に、甲状腺の元になる甲状腺源基が舌のつけ根から徐々に下降して頸部の正常の位置に移動します。ところが稀に途中で止まったり、行き過 ぎたりしたものや、分裂して正常な位置の甲状腺以外に、甲状腺組織が有る場合があります。これを、異所性甲状腺といいます。
最後の例は50代男性ですが、PET健診によって異所性甲状腺がんを見つけた方です。図5のように上縦隔に集積(→)を認めます。CTでは胸骨丙の裏側の丸い腫瘍(図6:→)です。甲状腺はもう少し上のほうに気管をはさむようにしてあります(図6:→)。この方は手術してこの腫瘍を切除し、病理検査の結果、甲状腺がんの中の乳頭がんであることがわかりました。

■まとめ
甲状腺がんは全がんの中では決して多いがんではありませんが、決して少ないがんでもありません。事実、当センターのPET健診で見つかるがんの中で3番目 に多いがんです。これはほかのがんのように検診で調べられることが少なく、自覚症状もほとんどないためだと思われます。PETは身体全体のがんを見つける ので、症例1のような他の検査では見つけれないような超早期のがんも、また甲状腺以外の場所にできた甲状腺がんも見つけることができます。また女性に多い がんでもありますが、男性も決して少なくありません。
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