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【医療】リハビリテーションは必然!?(平成25年春号掲載)

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リハビリテーションは必然!?

■歩行できるように頑張るのは生活に困るという必然から
今回は、当院におけるリハビリテーションの概念をお話しします。
本来リハビリテーションとは病気や外傷によって身体的あるいは精神的な障害が起こると、本来ごく自然に行われていた家庭的、社会的生活が制約されるように なります。こうした障害を受けた方に対して残された能力を最大限に回復させ、また新たな能力を開発し、自立性を向上させ、積極的な生活への復帰を実現する ために行われる一連の働きかけをリハビリテーションと言います。
しかし、病気となり命は助かったが、麻痺が残ったり、記憶障害が残存したり、歩行ができなくなってしまったり、うまくしゃべれなくなってしまった時にその ことを受容してリハビリに精をだすのはなかなかできないことなのです。そしてそのようなときに、一から箸の持ち方やトイレの練習などする気になれないで す。しかし、不思議と皆さんが頑張るのは歩行です。
では何故歩行は頑張るのでしょうか?それは、歩くというのは人間の必然だからです。足が立てないと生活に困るからです。そのため下肢の麻痺の改善は上肢より良いのです。上肢は、片方が麻痺しても片方で、ある程度生活ができてしまいます。

■1か月ギプスで固定していたら20年動かなかった右手が動くように
リハビリには必然が必要なのです。何のためにリハビリが必要かが重要なのです。障害を受ける前の生活に戻りたいか別の生活を選ぶかで、改善度は全く違います。私はよく患者さんにこう言います。
「障害が良くなるのを願うことはやめてください、しかし元の生活に戻ることをあきらめないでください」と。
よくわからないと思われるでしょうが、大事なことはただ手が動くようになる、足が動くようになるようにとリハビリしても脳は指令を出さないということで す。脳は何かをするため、何かをしなくてはいけないので手が動き足が動くようになるのです。我々はこの必然になるべくこだわりリハビリを行うようにしてい ます。
最近のことですが、20年前に脳梗塞で右手の完全麻痺が残ってしまった方がいました。その方が転倒して今まで使っていた左手を骨折して1か月ギプス固定し ていました。すると1か月後には20年間動かなかった右手が動くようになりました。これは脳が必要だと認識して動くようになったのです。
これが必然です。リハビリ向上には必然が必要なのです。今の日本では福祉が充実していて、介護度が上がれば介護保険で様々なサービスが受けられます。自分 で食事が食べられなくても食べさせてくれる。着替えられなくても着替えさせてくれる。お風呂に入れなくても入れてくれるのです。

■自宅復帰と自力通院を目指す職業、学業、趣味の復帰も
高額な費用負担をしなくてもやってくれる世の中なのです。
この生活を選ぶのなら我々のリハビリテーションは必要ないでしょう。我々は患者様が改善を望むのであれば、入院して集中的にリハビリテーションを行い、まず自宅復帰を目指してもらいます。
自宅復帰すると自分でやらなければならない、この必然を利用します。回復後は、短期集中で訪問リハビリテーションを行います。そして通院リハビリテーショ ンができるように目指します。当院では、障害を起こした患者さんがなるべく自力で通院できるように促します。自分で通院できることを目標にしてやっており ます。
現在大勢の方が障害があっても電車で通院して、当院4階の通所リハビリテーションまでの階段を上ってきます。これは、本当にすごいことで感動します。
現在当院では拘縮(こうしゅく)、痙縮(けいしゅく)の治療にボトックス注射(編集部注)をしておりますが、これも打つだけでは、意味がないのです。柔らかくなった手や足を使わなくては元に戻ってしまうのです。動くことが必然の生活がなければならないということなのです。
現在我々は、日常生活の復帰は当然ですが、職業復帰、学業復帰、趣味活動の復帰、スポーツの復帰に力を入れてやっております。また、運転シュミレーターを導入して、障害を受けても自動車の運転において、積極的に評価をすることを行っております。
障害を受けてもちゃんと上を向いて歩くためにリハビリテーションはあると思っています。そのサポートをするのが我々リハビリテーションスタッフであると考えております。

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ボトックス注射について(編集部注)
■脳卒中で手足が麻痺した男性が23年ぶりに歩けるように!
ボトックスはボツリヌス菌から抽出されたタンパク質の一種です。これには神経伝達物質のアセチルコンの伝達を弱める働きがあります。
4年ほど前、この作用を利用してオーストラリアの医療チームが、脳卒中で20年以上四肢が麻痺して歩けなくなっていたラッセル・マカフィーさん(当時49 歳男性)に注射治療を始めたこところ、18か月後には杖をつきながら100mほど自力で歩くことができるようになりました。
一般的にはボトックス注射の治療効果は発症の直後に処方した場合ですが、強い精神力と努力でラッセル・マカフィーさんは、23年ぶりに自力歩行が可能になったのです。
このボトックスは、すでに1970年代から眼科や神経内科において、顔面チックや斜視、斜頚など筋肉の活動亢進によって起こる疾患に使われてきました。日本でも1997年4月に厚生省の認可を受けてその安全性は確立している薬です。
現在では、眉間の縦ジワ、額の横ジワ、目尻のカラスの足跡などのようなシワに有効で美容治療にも使われています。また、多汗症などにも有効で、世界中で広く研究が続けられています。

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