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【連載もの】介護制度について考える 第6回(平成24年12月号掲載)

50介護保険サービスの利用開始…と思ったら再入院  愛知大学 地域政策学部 教授 西村正広氏

 

■両親を別々のケアマネが担当!?

 

ケアマネージャー選びを始めたとき、私は両親揃って同じケアマネに担当してもらいたいと望んでいました。父と母の暮らしを「夫婦1組」で理解してもらい、包括的なケアプランの下で支援してもらいたかったからです。

 

と ころが10月号で記したように、父が受けた認定は「要介護1」、母は「要支援2」でした。介護保険制度では「要介護」の人を「居宅支援事業所」のケアマネ が担当し、「要支援」の人は「地域包括支援センター」のケアマネが担当することになっています。両親一緒に1人のケアマネに担当してもらうことはできませ ん。結局、父と母はそれぞれ別のケアマネを頼むことになりました。たまたま区内の社会福祉法人A会の施設内に「居宅支援事業所」と「地域包括支援セン ター」が併設されているので、前者に父、後者には母の支援を担当してもらうことにしました。同じ施設内にニつの事業所があってケアマネ同士の連携も組みや すいだろうと考えたからです。

 

それにしてもなぜ「要介護」と「要支援」では担当するケアマネの事業所が違うのか、お役人の作る制度にはそれなりの根拠や意味はあるのでしょうが、少なくともわが両親にとっては釈然としない仕組みです。

 

 

 

■ケアマネには遠慮しない

 

し かし、逆に父と母それぞれにケアマネが付いてくれれば、知恵を出し合って我が家を支えてくれることも期待できます。どんなケアマネさんが担当してくれて も、本人や家族の意向や質問を遠慮しないでケアマネさんに伝える、遠慮しないでものを言うことが大切です。きちんと応じてもらえなかったり、ものが言いに くいようなら別のケアマネに代えたって良いのです。

 

幸い父の担当ケアマネになった山田さん(仮名)も、母の担当になった井 上さん(仮名)も熱心でよく話を聴いてもらえる方でした。母の退院後、2人のケアマネと私と妻とで話し合いの場を持ち、今後、両親の暮らしを支えてもらう ためにホームヘルパーを活用することにしました。専門家の支援を受け始めれば、名古屋に住む私も妻も少し肩の荷が降ろせそうです。

 

 

 

■糖尿病が悪化。母、再入院

 

そ んな計画を実行に移そうとした矢先、再び母が入院することになりました。母は10数年前から糖尿病の治療を受け、しっかり節制して症状は安定していまし た。ところが脳梗塞で脳外科に入院しているあいだ糖尿病の治療は中断され、退院して糖尿病の主治医であるS内科に受診したところ血糖値がとても高くなって いることが分かり即入院を命じられたのです。

 

また入院。12月、私は雪が舞う札幌に出向きS内科へ母を連れて行きました。母は「重ね重ね申し訳ないね」と言いながら病床に横たわりました。

 

 

 

■未熟な「地域医療連携体制」

 

脳 梗塞が発症したとき母が救急入院したのは市内でも有名な脳外科病院で、高度な治療やリハビリを受けられました。でも糖尿病の専門医はおらず、そちらの治療 はおろそかになっていたようです。退院するときも糖尿病についての説明や指導はありませんでした。脳梗塞についても今後の受診指導や他院への紹介は無いま までした。「良くなったから退院ですよ」と放り出された感じでした。

 

平成18年以降、国は都道府県の策定する「地域医療計 画」において糖尿病や脳卒中の患者を地域の医療機関の間で連携を取りながら支えていく体制を作るように求めています。しかしそれはまだ「絵に描いた餅」 で、地域医療連携体制は始まったばかりです。私はそんな現実を母の2度目の入院で目の当たりにしました。

 

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西村正広氏略歴:日本福祉大学大学院修了
社会保険中京病院
ソーシャルワーカーなどを経て現職
専門:社会保障

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